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健康百科

むくみのはなし
下肢のむくみ 群馬大学医学部
腎臓リウマチ内科 廣村桂樹

むくみとは
  むくみと肥満は違います
 朝起きて鏡をみると顔が腫れぼったかったり、夕方になると足がむくんで靴がきつくなったりすることは、皆さんもしばしば経験することと思います。これに対して、食べ過ぎ、運動不足でおなかのベルトがきつくなるのは肥満と呼び、むくみとは区別されます。むくみは体の細胞のまわりに水分が過剰にたまった状態であり、肥満は過度の体脂肪が蓄積した状態です。むくみのもとは水分ですので、指で少し強めに20秒くらい押すと水分が移動して押した部分がへこんで指のあとが残ります(図1)。むくみがあると靴下のあとがくっきりと残るのも同じ原理です。

組織間液とむくみむくみの原因
むくみは細胞のまわりの水分(組織間液)が増えた状態です   人間の体の60%は水分でできています。この水分のうち3分の2は細胞の中にあり、残りの3分の1は血管内の血液と細胞のまわりにある組織間液に存在します。むくみで増加する水分は、主にこの組織間液です(図2)。組織間液は毛細血管やリンパ管を通って心臓に戻っているので、血液やリンパ液の流れが悪くなると組織間液が運ばれづらくなり、むくむことになります。例えば長く立っていて足がむくむのは、重力により水分が心臓に戻りづらくなるからです。 またこれとは別に、血液中の蛋白が減少するとむくみます。蛋白は浸透圧と呼ばれる力で血管の中に水分を引き込む力を持っているので、蛋白が減少すると組織間液が血管内に戻りづらくなります。  さらに体全体の水分量が増えてもむくみが生じます。例えば塩分を取り過ぎるとむくみやすくなりますが、これは塩には水を保持する力があるからです。また女性の方で生理前にむくみやすくなるのは、ホルモンの関係で体の水分量が増えるためです。こうして増えた体全体の水分が主に組織間液としてたまり、むくみとなります。

医師に相談すべきむくみ
見逃すと危険なむくみを中心に紹介します
 夕方きつかった靴も、一晩寝て朝になると履けるようになります。多くのむくみはすぐに改善し、このような一過性のむくみはあまり心配はいりません。しかし、むくみが持続するような場合はいろいろな病気が隠れている可能性があり、医療機関を受診することをお勧めします。  なお、むくみには顔や両足などをはじめとして体全身に広がるむくみ(全身性)と、片方の足や腕だけにとどまる部分的なむくみ(局所性)があります。また、医学的にはむくみのことを浮腫と呼んでいます。  以下、医師への相談が必要なむくみの原因を中心に、全身性と局所性に分けて書いてみます。

全身のむくみ 
■腎性 ネフローゼ症候群、急性腎炎、急性腎不全

 腎臓が原因として高度なむくみが生じる病気として、ネフローゼ症候群があります。ネフローゼ症候群では尿にたくさんの蛋白が漏れ出ることで血液中の蛋白が減少しむくみます。ネフローゼ症候群はいろいろな原因で生じますが、最近は糖尿病による腎障害(糖尿病性腎症)でネフローゼ症候群となり、むくみが出る患者が増えています。なお尿にたくさんの蛋白が混ざると尿が泡立つようになりますので、このような場合は、内科や腎臓内科を受診してください。

 ネフローゼ症候群以外にも、急に腎臓の働きが低下する急性腎炎や急性腎不全では、水分や塩分を尿として排泄する力が低下するため、むくむようになります。一方、ゆっくり腎臓が障害される慢性腎炎や慢性腎不全では、かなり腎臓の働きが低下するまでむくみなどの症状が出ないことも多く、検診などで尿や血液の検査を受けることが必要です。

■心不全  血液を循環させている心臓の力が弱まるために血液の流れが悪くなり、組織間液の水分が増加します。心臓が弱っていると、少し動くと息切れがしたり、すぐ疲れるなどの症状を伴います。また水分が肺の中にたまってくることもあり、この場合は肺水腫と呼ばれています。寝ると下肢の水分が肺に移動しやすくなるため肺水腫が悪化して、息苦しさを感じるようになります。このような場合は、放っておくと呼吸困難を生じ、命にかかわることにもなりますので、至急、内科や循環器科の医師に相談しましょう。

■肝硬変  肝硬変などで肝臓の働きが悪くなると肝臓での蛋白の合成が十分できなくなり、血中の蛋白濃度が低下してむくむようになります。また肝硬変の場合は肝臓が硬くなることで腸から肝臓に向かう血流が悪くなり、お腹の中に水(腹水)がたまることもあります。

■その他  原因不明で思春期から中年の女性に生じる「特発性浮腫」、甲状腺ホルモンの分泌低下などにより生じる「内分泌性浮腫」、解熱鎮痛剤や降圧薬などを服用した際に生じることのある「薬剤性浮腫」などがあります。

部分的なむくみ ■静脈瘤  静脈には血液が逆流しないように弁があります。特に下肢の血流は、筋肉の運動と静脈の弁によって立っていても重量に逆らって血液が心臓に戻っていきます。この弁の働きが悪くなると血液がうっ滞、逆流してむくみやすくなるとともに、静脈が拡張して蛇行する静脈瘤ができます。弾性ストッキングや手術などの治療法がありますので、外科や心臓血管外科(循環器外科)の医師に相談しましょう。

■深部静脈血栓症  静脈の中で血液が固まって血栓をつくってしまうと、血流が停滞してむくみが生じます。特に深いところにある太い血管がつまった場合を深部静脈血栓症と呼びます。この血栓がはがれて血流にのって肺の動脈につまると、呼吸困難となり命にかかわることもあります。急に片足が腫れて痛む場合はこの病気の可能性がありますので、至急、総合病院の内科や循環器科を受診してください。 

■腫瘍による閉塞  腫瘍により血管やリンパ管が閉塞することでむくみが生じます。例えば肺がんなどが大きくなり大静脈が圧迫され閉塞すると、顔や片腕がはれたりすることがあります。

■その他  乳がんや子宮がん手術でリンパ節を切除することでリンパの流れが悪くなってむくむ「リンパ性浮腫」や、ハチに刺されたところが腫れたりする「炎症性浮腫」などもあります。


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