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健康百科

メタボリック症候群のはなし
図1 ウエスト周囲径の測り方 群馬大学医学部附属病院 
内分泌・糖尿病内科(第一内科) 清水弘行

脂肪の話
 体の脂肪は、余分なエネルギーをためておくだけでなく、体温の維持や外部からの衝撃に対して内臓を守る働きも持っていますので、生命の維持には必要不可欠です。しかし体の脂肪が過剰に増加すると血糖を下げるホルモンであるインスリンの効果が弱くなってしまい、その結果として血糖値が上昇してきてしまうので、体の中に適切な量の脂肪が維持されていることが大切です。

 現在、体格の指標としてBMI(Body Mass Index;[体重(キロ)]÷[身長(メートル)]÷[身長(メートル)])が広く用いられており、BMIが25を超えると肥満です。体の脂肪は、その分布状態から大きく分けて体の表面、皮下にたまる皮下脂肪とお腹の中にたまる内臓脂肪があります。内臓脂肪と呼ばれるのは、お腹の中にある胃や腸の周りにある腸間膜や大網にたまった脂肪です。内臓脂肪組織からの血液は、門脈を通って直接肝臓に入ることから、糖代謝の中心である肝臓への直接的な影響が大きいものと考えられています。

 脂肪細胞ではホルモンのような作用を持ったアディポカインという生理活性物質が作られて血液の中に放出されています。内臓脂肪が蓄積するとインスリン感受性を高める働きのあるアディポネクチンという良いアディポカインの合成が減少しますので、内臓脂肪の多い方では血液中のアディポネクチンが低い値を示します。さらにインスリン感受性を悪化させる腫瘍壊死因子?αや血栓形成を促進するプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1(PAI-1)という悪いアディポカインの産生も内臓脂肪の方が皮下脂肪より多く、内臓脂肪が増加するとこれらの産生も増加します。内臓脂肪の増加に伴って血液中のアディポカインの濃度がこのように変化してインスリン感受性の低下、血圧の上昇や動脈硬化の促進などメタボリックシンドロームを形成するさまざまな病態が出現します。

表1 メタボリック・シンドローム(症候群)メタボリックシンドロームって?
 高血圧や糖尿病など肥満症に伴うさまざまな代謝異常の出現は、体全体にたまった総脂肪量よりもむしろ内臓にたまった脂肪量に密接に関連していることが明らかとなりました。このようにして肥満、糖尿病、高脂血症や高血圧といった危険因子を3〜4つ持っている人は、まったく持っていない人に比べて約30倍、心筋梗塞などの虚血性心疾患になりやすくなることが日本人においても明らかとなりました。糖尿病、高血圧、脂質代謝の異常がそれぞれ一つ一つはそれほど悪い状態ではなくてもお互いが重なり合うと心臓病や脳卒中の危険性を高めてしまいます。そこで表1に示したようなメタボリックシンドローム(症候群)という概念が提唱されるようになりました。ウエスト周囲径の増加に加えて血糖値の上昇、高血圧、脂質異常の中で2つ以上の異常を伴うとメタボリックシンドロームと診断されます。ウエスト周囲径の増加に加えて血糖値の上昇、高血圧、脂質異常のうち1つだけ合併されている方はその予備軍と考えられてもよろしいかと思います。

内臓脂肪はどうやって測るの?
それでは、どのようにして内臓脂肪の蓄積を調べるのでしょうか?
 内臓脂肪の蓄積を正確に評価するには、病院や診療所においてCTスキャンを用いて臍の高さで横断して撮影した内臓脂肪の総面積を測定することが重要となります。その値が100平方以上なら内臓脂肪量が多く、危険性が高いということになるわけです。しかしながら、皆さんがどこの病院や診療所においてもCTスキャン検査で内臓脂肪量を測定していただけるわけではありませんので、実際に内臓脂肪がどのくらい蓄積しているかの目安には臍の高さのウエスト周囲径が用いられています。ウエスト周囲径の測定方法は、図1にありますように真っすぐに立っていただき、臍の高さに巻き尺を当て背中や腰で巻き尺が水平に巻かれているかを確認します。測定を行う時には、両腕を体の横に自然な状態で下げてもらい、息を吐き終わった時に目盛りを読み取ります。太りすぎていて臍が下の方を向いている方の場合は、肋骨の一番下と骨盤の腹側で一番上の部分の真ん中の高さで同じように測ってみてください。具体的にはこれまでの臨床研究成績に基づき内臓脂肪面積100平方に相当するウエスト周囲径が、日本人男性では85、日本人女性では90です。女性は皮下脂肪が多いために男性より基準がゆるくなっています。また男性では、臍の高さのウエスト周囲径はズボンのウエストサイズより大きいことが多いようですので、ウエストサイズで代用なされないで実際にウエスト周囲径の測定を行ってください。BMIが25以下と正常範囲にある方でも実際にCT検査を行ってみると内臓脂肪が蓄積している「隠れ内臓肥満」の方もいらっしゃいますので、ぜひご自身のウエスト周囲径を一度測定してみることをお勧めします。

"メタボリックシンドローム"といわれたらどうしましょうか? 
 それでは"メタボリックシンドローム"はどのように治療したらよいのでしょうか?

 内臓脂肪だけを選択的に減らす治療ということは簡単ではありません。体全体の脂肪を減らした結果として内臓脂肪も減少してきますので、肥満の方は、体重を減らす必要があります。5%の減量により、肥満症に伴ういろいろな合併症が改善すると言われているので、当面の減量目標は5%ということになります。減量療法の基本は、食事療法と運動療法です。BMI22に相当する理想体重を参考として体重当たり25/日のカロリー制限を行いながら、1日20〜30分の歩行運動を行いましょう。できたら軽く汗ばむくらいの速さがいいと思います。運動の効果は、3日以上は持たないということも言われておりますので、1週間に3日以上は運動しましょう。忙しくて運動される時間がなかなかとれない方では日常生活の中でエレベーターを使用しないで階段を使用したり、近い距離は自動車を使わないで歩くなどの工夫も大切です。ただし糖尿病の方では運動してはいけない方もいらっしゃいますので、運動療法を始める前によく主治医の先生とご相談されてください。内臓脂肪の蓄積には、過食、運動不足とともに、糖類やアルコールの摂取の関連が高いことが知られています。食事や運動など生活療法の徹底する中で甘いものやアルコール摂取も控えておくことも内臓脂肪の減少に有効です。

おわりに
 来年度から実施される特定検診では、ウエスト周囲径の改善によるメタボリックシンドロームの撲滅が大切なテーマです。どうか皆さんもこれをきっかけにご自身の日常生活習慣をもう一度見直されてメタボリックシンドロームにならないようにご注意ください。


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