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フードファディズム
メディアに惑わされない食生活とふつうに食べること

群馬大学教育学部教授
高橋久仁子
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 教育学部教員として食生活領域を担当して20年目の今秋、ようやく『フードファディズム』と題する1冊を出版できました。「メディアに惑わされない食生活」を副題としているので、出版を含めたマスメディアの方々からは嫌われそうな書名です。

 フードファディズムとは「食べ物や栄養が健康や病気に与える影響を過大に評価したり信じること」を意味します。適正か過大かの判断は難しく、過小評価もまた問題ではありますが、体への好影響や悪影響をことさらに言い立てる論です。ちまたにあふれる雑多な食情報にはフードファディズムが多々紛れこみ、食生活教育や栄養指導を時に混乱させています。

フードファディズム
中央法規出版刊
 今年1月に起きた「納豆品切れ騒動」は「よくかき混ぜた納豆を1日2パック、朝と晩に食べると痩せる」という「あり得ないことをあるかのごとく騙る」という意味で、そしてその情報を信じて「痩せることを期待して納豆が大流行した」という意味でフードファディズムでした。

 この概念を私が初めて認識したのは1991年のこと。群大に着任して3年が過ぎ、怪しげな食情報が世の中には山ほどあり、それが地味な食生活の教育を妨げることに直面させられていたときでした。それ以来、巷にあふれる食情報をフードファディズムの視点で検証し、すでに3冊の単行本をまとめました。いずれも「フードファディズムとは」とか「フードファディズムを考える」という書名を希望したのですが出版側に却下され、4冊目にして「ようやく」日の目を見たのでした。

 7章から成る本書の第1章ではフードファディズムの概念を紹介しました。続く第2〜5章では食情報との付き合い方「健康食品」の問題性、マスメディアの食情報のカラクリ、商品の宣伝広告に潜むトリック等について解説しました。

 第6章は「食のジェンダー問題」を取りあげました。「食生活は女性の役割」という社会通念が「食のジェンダー問題」です。フードファディズムとは縁がないように見えますが、健全な食の営みを阻害する因子の一つです。食と健康が密接にかかわることは周知の事実になりながら未だ残る「食事のことは女性に任せておけばいい」という意識。これは健康管理の一環として自分自身の食生活を運営できない男性を生み、健康問題発生の誘因となっているのです。性別にかかわらず食の基本知識を身につける重要性を訴えました。

 そして第7章が「フードファディズムに陥らない食事法」で「ふつうに食べる」とはどのようなことかという、ごくごく当たり前のことの説明です。本誌の15号「1800で必要な栄養素はほぼ適正に摂取できる」1日分の食材例と食事例を紹介しました。その内容を中心として適切な食生活を営むためのヒントを提案したものです。一番読んでほしいのはこの章ですが「当たり前のことしか書いてないじゃないか」と読み飛ばされてしまうのではないかとも心配しています。

.  さて自著紹介はこれくらいにしましょう。食生活教育を担当する私は「そこそこの健康を目指して、ほどほどに食べるとはどのようなことか」への関心がどうすれば高まるのかを日々模索しています。健康情報娯楽テレビ番組の問題性や商品宣伝広告のトリックを紹介するのも「ふつうに食べる」ことに関心を向けてほしいからにほかなりません。

 私は小学生時代に急性腎炎を3回患いました。そのたびに学校を長期欠席して安静を守り、食塩・タンパク質の摂取制限を忠実に実行しました。身体活動や食事に伴う腎臓への負担をできるだけ軽くしながら腎機能の回復を待つことが治療でした。それが私と食事療法との出合いです。したがって、私は「食べものや栄養は健康や病気に大きく影響する」と考えています。しかし、「食さえよくすれば健康万全」とは考えません。食で守れる健康や、防げる病気は数多くありますが、食では防ぎようのない病気も少なくないことを承知すべきです。

 今、「ヘルシー」をウリにする食品がいろいろあります。でも「ヘルシーといわれる食品」をいくら食べても「ヘルシーな食生活」にはなりません。食生活全体の調和がとれて初めて「ヘルシーな食生活」になるのです。

 さて、年末年始は忘年会や新年会の季節です。外食や宴会食は肉や魚、油脂類が多く野菜が少ないことが一般的なので、あまり「健康的」とは言えません。しかし、食べ方しだいで「不健康さ」は軽減できます。先述した「1日分の食材例」を1週間分で考え、「今週は何が多くなり過ぎ、何が少なくなり過ぎるか」の見当をつけてください。そして多過ぎる食材をさらに食べ足すことのないように、また、少な過ぎる食材は意識的に食べる、という工夫が大切です。

 こうしても外食・宴会食のマイナス面をカバーしきれるわけではありませんがやらないよりはましです。「1日分の食材例」を一つの目安に、適切な食生活に近づけてください。

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