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リレーエッセイ ドクターの呟記(つぶやき)

け せら せら
群馬大学附属病院 
臓器病態外科学 田中和美

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 「だったら医者になってみたら?」9年前、薬学部の大学院生(修士課程)研究にどっぷりつかっていた私にこう言ってくれたのは当時所属していた教室の教授だった。 教授室へ一人ずつ呼び出され、進路についての意思表示をする時期だった。製薬会社などの企業に就職するか博士課程へ進学するかのどちらかを選択をするのが普通だった。そのとき私は「企業は合わない気が…」「博士課程もちょっと…」「人と接する仕事がしたいんだけど…」とうだうだ言う割には明確なビジョンがなく、自分がやりたいことを単語として表現できなかった。辛うじて近い印象を持ったのが「病棟薬剤師」である。しかし、その当時は今みたいに薬剤師が病棟に出て盛んに臨床に参加できる時代ではなかった。そんな私に「あなたの話を聞いているとそれが一番合ってるよ。4年間勉強して医師免許取って、考えるのはそれからでもいいじゃない」と、3年生から編入できる学士編入学という方法があることを教えてくれた。さすがに「医者」という単語は知っていたが「医者になる」という選択肢は思いつきもしなかった。今じゃ考えられないが血を見るのも怖いし、手術なんて見たら絶対倒れると思っていたのだから。まぁでも受けて受かればそれも運命か?と思い受験した結果、今もここにいる。ちなみに群馬は非常に早くから「病棟薬剤師」の設置に取り組んでいるところだった。もっと早く知っていれば、薬剤師としてここに来てたかもなぁと思ったこともあるくらい。まぁこんなに口うるさい薬剤師がいたら先生方はたまったもんじゃないと思うが。

 しかし縁もゆかりもない、知り合いも誰一人いない群馬にやってきて最初の2年間はまったくこの土地に馴染めず、正直大嫌いだった。ところが3年目、話好きの私はポリクリ(臨床実習)が始まり実際患者さんたちと接するようになって、だんだん群馬が好きになった。何せ群馬の人は地元意識が高く、群馬を愛している。そして患者さんからは群馬の良さだけではなく多くのことを教えてもらい成長させてもらっている。時には一緒に笑ったり泣いたりしながら。今でも外来に来るたびに顔を見せてくれる方もいる。忙しくてなかなか会えないことも多いが、元気そうな顔を見せてもらえると私も元気をもらえる。

 おかげで過酷な毎日だが楽しく過ごせている。もちろんまだまだ修業中、これから勉強しなくてはならないことが山ほどあるが、そうやって患者さんにしてあげられることが増えていくのかと思うとこれもまた楽しいかもしれない。

 振り返ってみるといろいろ回り道をしてきたが、無駄だったと思うことは一つもない。すべてが今に活きている(と思いたい)。そんなことを思いながら、愚痴も多いが充実した毎日を過ごしている。これが自分がやりたかった「人と接する仕事」なのかな。

 今朝はこの冬一番の冷え込みで赤城山もうっすら白くなった。これから大好きな季節がやってくる!


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