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こころ・生活・食
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太るもやせるもあなたが主役 あなたが減らす あなたの体重

健康の維持増進は「栄養・休養・運動
群馬大学教育学部教授
高橋久仁子
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 食生活教育に携わる者として「食は重要」と認識されることは、「どうでもいい」と思われるより、もちろんうれしいことです。しかし、食に過剰な期待をされても困ります。

 食べるものが、あるいは食生活がよければ子どもは心身ともに健やかに、学業成績優秀に育ち、大人たちは生活習慣病や認知症とも無縁で健康に長生きできる、とは限りません。確かに食は大切ですが、それだけで人生が決まるものでもありません。

健康の維持は「食う・寝る・動く」
 健康の維持・増進の三要素として「栄養・休養・運動」が提唱されています。俗な言葉で表現すれば「食う・寝る・動く」です。

 これら三要素のうち、「休養・運動」は自分自身が自分の体を動かすなり、休ませるなりしなければなりません。誰も代わってくれません。「栄養」も自分自身が適切に食べるしかないのですが、これにだけは「食べ物」という「モノ」がかかわります。きっとそのためでしょう、休養や運動の不足、さらには不摂生な生活習慣のツケを帳消しにしてくれる「魔法の食品」があるのではないか、あるといいな、という期待が生まれます。そしてそれが「栄養」に対する誤った期待や関心を生んでいます。しかし、「それ」さえ食べれば健康が保証されるという「魔法の食品」はありません。あるのは「健康の維持・増進に効果的な食事の仕方」や「病気になりにくい生活の営み方」です。

 十分な食事や休息も取れないような多忙な生活から生ずる疲労や睡眠不足は、その原因を取り除かなければどうしようもありません。体調不良はその原因を探し、それを解決しなければ健康回復は望めません。根本的な解決を「できないもの」と決めつけ、食だけで何とかなる、何とかしようとするのは無理です。食と健康は密接にかかわりますが、食だけが健康を支配するのではありませんし、食の限界もあります。食の在り方で維持できる健康もあれば、食の力の及ばない疾病も少なくないことを忘れてはなりません。

「身体に良いって」何のこと?
 商売柄、「○って体にいいんですか」とよく質問され(○は食品、または食品成分)、そのたびに返答に窮しています。なぜなら、食品を一般論として単純に「体に良い・悪い」と断定できないからです。「あなたは『それ』に何を期待しているのですか」と、再質問しないと答えられません。

 ある食品が体に「良い」か「悪い」かは「それを食べるのは誰か」によって個別に判断しなければなりません。しかも同じ人であっても、ある状況では「良く」ても別な状況では「悪い」こともあるのです。

 例えば、甘いチョコレートそれ自体が「体に良い・悪い」という価値を持つわけではありません。運動中のエネルギー補給には「良い」といえても、就寝前では「悪い」といわざるを得ない場合がほとんどでしょう。

 「玄米は精白米より体に良い」はどうでしょうか。玄米は果皮や胚芽を取り除いていないので精白米よりも多様な栄養成分を含んでいますが、消化吸収に難点があります。胃腸が丈夫で食欲旺盛な人にとって玄米は食べ過ぎ防止などを含めて「良い」と言えるかも知れません。しかし、胃腸があまり丈夫でない小食の人の場合、玄米では総エネルギーやタンパク質、脂質の不足等を招きかねず、「悪い」となることもあるのです。

 さらに味わいも無視できません。玄米食をおいしいと感じる方はそれでけっこうです。でもそうでない方が「健康のためにはまずくても仕方ない」は少々悲しい気がします。

 食品を「良い」「悪い」と二分し、「良い」といわれるものだけを食べ、「悪い」とされるものを排除しても「良い食生活」になるわけではありません。食品には栄養素の含まれ方や消化性などに違いがあります。その特徴を知り、「今」の自分との関係を十分に考え、選び、量に配慮して食べることこそ重要です。ある食品を「体に良い物」にするのも、「悪い物」にするのも一人一人の食べ方にあることを再確認していただきたいと思います。

食べ物を食べ物として
 食べ物は食べ物であって、薬ではありません。健康維持を考えた食生活に「特効食品」はありませんし、一夜漬けも効きません。健康を損なわずに確実に減量するには数カ月から年の単位で計画し、「食」だけではなく生活全体を見直し、改めるべき点を改めていくしかありません。この事実以外に「何か特別な方法がある」と期待させる情報の氾濫がこの事実に「気づかない・気づかないふりをしたい」人を生んでいるのかもしれません。  

くどいようですが、もう一度。一夜にして太ることはなく、一夜にして痩せることもあり得ません。「食べたいものを・ガマンしないで・飲んでも食べても・やせられる」ものは現時点ではありません。「適切に食べれば多すぎる体重は減る」という当然の理を自分のものにしてくださる方が一人でも増えることを願っています。

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