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リレーエッセイ ドクターの呟記(つぶやき) かゆみの体験 群馬大学附属病院 附属病院皮膚科 天野博雄
早いもので医師になってから15年経とうとしています。その間、皮膚科医として主にアトピー性皮膚炎などのかゆみを伴う病気の治療と研究に携わってきました。医師として経験を積んでくると(年をとると?)若い時と比べて患者さんの気持ちが多少なりとも分かるようになってきたと感じています。これは人間的に成長してきた、といえば格好がよいのですが、やはり自分でかゆみ、湿疹を体験してきたことも大きな理由ではないかと思います。どのような仕事でも経験は重要ですが、特に医療では、かゆみ、痛みなど病気の苦しみや悩みを理解できるかどうかという点で、自分自身での体験と経験というものは非常に貴重であると感じています。 10年ほど前にカナダに留学した時のことです。現地に住みはじめて1週後から猛烈な体のかゆみに悩まされました。日本と比べて非常に乾燥しているために乾燥性の湿疹になっていたのでした。手持ちの外用剤では効果がなく、仕事をしていた大学の付属病院で診てもらおうと受付にいくと、まずファミリードクターに診てもらうよう言われました(北米はファミリードクター、いわゆるかかりつけ医の制度があり、はじめから専門医にかかることはできません)。手続きをしてファミリードクターの診療科に行くと、「完全予約制です。一番早い2週間後に予約を入れましたよ」と言われました。2週間もかゆいのを我慢できるはずもなく自分で薬局に行き適切な薬を購入、治療しました。 昨年の秋のこと。風邪気味でしたので薬を飲みました。次の日、入浴後に体がかゆく、全身が真っ赤になっているのに気がつきました。「薬疹(薬によるアレルギー反応)か」と思いすぐにかゆみ止めの内服・外用を行いました。ところが数日後のことです。長男のほっぺたに平手打ち様の紅斑が出現しました。りんご病です。つまり、自分のあの紅い発疹はりんご病であったと判明しました。(もちろん再度同じ風邪薬を飲んでも体は紅くなりませんでした)この時の何とも言えないかゆみ(と関節痛)も貴重な経験となっています。 これまでも冬になると肌が乾燥してかゆみが出ていたのですが、最近ではストレスが加わると季節にかかわらずあちらこちらがかゆくなります。なるほどストレスによるかゆみというのはこういうものかと分かりました。頭では分かっていてもかゆみを制御するのはなかなか難しく一筋縄ではいきません。 さて、現在の私の研究テーマはかゆみとストレスの関係、およびアトピー性皮膚炎です。基礎研究を通してかゆみの起こるメカニズムを明らかにし、かゆみを抑える物質を見つけ出すことで実際の臨床現場における治療に役立てることが目標です。臨床診療で培ってきた知識と基礎研究の成果、そして自分自身の「かゆい」経験を合わせ、いつか「かゆみ」を制御する日が来ることを夢みています。
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