重曹は体に悪いのですか
 夏ミカンがとても酸っぱかった時代、重曹をつける、という食べ方がありました。泡がシュワーと広がり、酸味が和らいだものでした。現在でも重曹はスーパーマーケットの一角で売られています。「重曹なんて使ったことがない」という人もいらっしゃる一方、便利に利用されている方もおいでのようです。しかし同時に「体によくないのでは」というウワサもあるようです。
 重曹は使用基準のない食品添加物として認められています。おもに小麦粉加工品の膨張剤(ふくらし粉)として使われていますが、加熱すると二酸化炭素を出す性質が利用されています。「炭酸まんじゅう」や「蒸しパン」などの内容表示に「膨張剤」とある場合、重曹が使われているようです。
 さらに、ワラビやゼンマイ、ヨモギなどのアク抜きには重要です。これらの山菜や野草をゆでる際、重曹を加えてゆで水をアルカリ性にすると緑色が鮮やかに、かつ組織が柔らかくなりやすく、アク成分の流出を促すと考えられているからです。
 医薬品としても利用されており、主に制酸剤(胃酸の中和剤)として使われています。アルカリ泉といわれる温泉(または鉱泉)の主成分は重曹ですが、温泉水そのものを治療的に飲むという、飲用療法も昔から行われています。
 ところで、重曹は炭酸水素ナトリウムなので、重曹が食品中に残る形で使用された食品ではナトリウムも摂取することになります。あく抜きなどに使われた場合は関係ありません。重曹1gに含まれるナトリウムは約274mg、食塩1g中のナトリウムは393mgです。従ってナトリウム量で換算すると、1gの重曹は食塩0.7gに相当することになります。
 食塩摂取を厳しく制限されている人は重曹を含む食品を食べることに注意を払ったほうがいいかもしれません。しかし、それ以外の人は、あまり神経をとがらせる必要もなさそうです。ビタミンの破壊を心配するなら、調理に重曹を使わなければいいでしょう。
 利用の歴史も長く、医薬品として内服されることも多い重曹です。「体によくない」と過剰に心配する必要はほとんどないように思います。
1999年2月