少子高齢化、所得や地域の格差拡大、自治体の財政難…。七月五日告示、二十二日投開票の知事選は、県民の将来に影響する重要な政治課題への対応を託す選挙となる。各立候補予定者は政策で支持を得ようとマニフェスト(公約集)を発表、有権者にとって、政策で候補者を選ぶ機会が広がった。ただ、実際には争点が鮮明でなかったり、具体性に欠ける主張も多い。切実な悩みを抱える県民の目線から、県政の課題と立候補予定者の公約を点検する。
「本当は地元で産めればいいんだけど…」。館林市出身で、都内に住む会社員の女性(27)は来年一月に里帰り出産を予定している。病院は佐野厚生総合病院(栃木県佐野市)にするつもり。近くの館林厚生病院の産婦人科が医師不足で出産の受け入れを休止しているためだ。市内に診療所もあるが、万一の時に近くに大きな病院がないと不安という。
 |
| きめ細かなケアのため、人材探しに腐心する前橋市内の特別養護老人ホーム |
二〇〇四年に導入された新しい臨床研修医制度の影響で、県内の中核病院から医師の引き揚げが相次いでいる。県は医師確保対策として、昨年度から修学資金の貸与や女性医師の再就職支援に乗り出し、今月は医師に県内医療機関への就職あっせんを行う「ドクターバンク」を開設した。
だが、医師不足は地方共通の課題。対策の効果は未知数だ。ある研修医(26)は「支援制度があっても、勤務先の労働力が確保されなければ自滅しに行くようなもの」と地方での就職に難色を示す。
人材不足は福祉分野でも重い課題だ。「福祉の学校を出た生徒が現場に来ない。人手が足りず、職員はみなくたくた」。前橋市内の特別養護老人ホーム(特養)で生活相談員を務める男性(35)は窮状を訴える。
介護保険制度が導入された二〇〇〇年ごろは福祉を志す若者が多かったが、景気回復に伴う雇用環境の改善を背景に、介護現場から離れる人が増えた。
職員の大半は慢性的な腰痛を抱える。月に四、五回の夜勤があり、疲労は蓄積。「ゆとりがなく、利用者に優しく接することができなくなってしまう」。そんな声が漏れてくる。
県は本年度、特養の入所待機者解消のため、現在の七千のベッドを一年で一割増やす計画を打ち出した。県の決断を評価する声がある一方「一年でどうやって職員を集めるのか」との疑問の声も。県は職員確保のため、福祉系学校や特養の事業者、群馬労働局などの関係者を集めて対策会議を始めたが、具体策はまだ見えてこない。
「足りない特養を作るのは大切。ただ、介護予防や人生の最後の迎え方など、全体を見渡さないと抜本的な解決にならない」と前橋市内の特養施設長(59)。介護の現場に抱えきれない課題が山積みにされている。