課題山積の中、日本のかじ取りを任された福田康夫首相。野党の攻勢にどう立ち向かえばいいのか。内政、外交の進め方は。
父、赳夫氏と激しい上州戦争を繰り広げ、戦後四位の千八百六日間、首相の座に君臨した中曽根康弘元首相(89)に聞いた。
◎各方面に目配り
―福田新首相をどう評価するか。自身を含め、本県出身の歴代首相と比較してほしい。
まず、新政権の誕生をお祝いしたい。群馬県が総理大臣の生産県になったようだ。福田さんは小渕恵三さんと同じように二代目。赳夫さんや私は創業者だ。
二代目は守りのタイプ。各方面に目を配った手堅い政権をつくるだろう。
総選挙を意識して古賀誠氏を選挙対策委員長とし四役に格上げするなど、背水の陣を敷いた。
世の中は旧自民党に返ったと言うが、党内の有力人材を見渡すと、派閥を率いる実力者たちになる。彼らを起用し、城を固めたという見方ができる。批判すべきことではない。
◎解散時期が大切
―参院で与野党勢力が逆転し、難しい国会運営が待ち構えている。
テロ特措法や来年度予算で、(民主党の)小沢一郎氏は猛攻撃を仕掛けてくる。福田さんの戦略は、一方で背水の陣を敷きながら、「和を以(も)って貴しと為なす」の聖徳太子の教えを守る。
党内も野党に対してもソフトタッチでやるだろう。その方が攻撃しづらくなる。小沢氏が剛ならば、福田さんは柔。果たして、「柔よく剛を制す」となるのか。結果は分からない。ポイントはいつ衆院を解散するかだ。福田陣営は来年七月の洞爺湖サミット後に延ばしたいし、小沢氏は遅くとも予算成立後からサミット前に勝負したいはず。私は東京サミットを終えてから解散し、三百議席を超える大勝利を収めた。
―外交で従来の路線からの転換はあるか。
安倍晋三前首相は口では強硬的であったが、昨年から中国、韓国を訪問し関係改善を図った。福田さんは引き続き両国との関係を大切にし、アジアの国々と友好を築いてほしい。問題は米国だ。中曽根―レーガンのような緊密一体な関係に戻すことが仕事になる。これが対北朝鮮でも重要になってくる。米大統領も代わることだし、よく調べておく必要がある。
―安倍政権は憲法改正に扉を開く国民投票法、教育基本法を肉付ける関連三法を成立させた。
福田政権も憲法改正は一つの目標として、取り組んでいくだろう。教育改革はいよいよ実行する段階に入った。特に、学習指導要領の改訂を留意したい。幹事長となった伊吹文明氏には重視するよう伝えている。学校体系をどうするか、どういう学校をつくるのか、これからの大事な仕事だ。
◎テロ特措法が重要
―福田新首相に最も期待する施策は何か。
臨時国会でテロ特措法を通すことが最大の課題になる。自民党の実力が問われる。重要な法律だから真剣勝負でやらなければ。内政では格差解消に取り組んでほしい。有効に手当てし、地方を重視してもらいたい。同時に、新しい経済戦略を考えていかなければならない。
なかそね・やすひろ 1918年、高崎市生まれ。旧制高崎中―東京大法学部。47年の衆院選に初当選、連続20回当選する。運輸相、通産相などを歴任し82年、首相に就任。国鉄民営化を推進するなど手腕を発揮、87年まで5年間、政権を担った。