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日本ラグビーフットボール協会理事会計役 
真下  昇
さん(横浜市港北区大豆戸町)

【略歴】高崎高、東京教育大卒。学生、社会人ラグビー選手として活躍。元日本協会レフェリー委員長。国際レフェリーを国内最高齢の54歳まで務めた。クボタ・マーケティング推進部理事。


成熟した大人の競技

◎ラグビー

 第四回ラグビーワールドカップが、一九九九年十月に英国の四協会(イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランド)とフランス協会の共同開催で行われた。同大会は十六カ国が参加し、四カ国ごとのグループに分け、まず総当たり予選が十月に行われ、各グループの上位二チームが十一月の決勝ラウンドへ進む方式である。

 日本はウェールズ、アルゼンチン、サモアのグループとなり、大会の主幹協会であり決勝戦を開催するウェールズ地方の中心都市カーディフに陣取り、試合に備えた。カーディフは緑多い古都で、静かな落ち付いたたたずまいの町である。

 ウェールズは日本との交流も長く、過去何度か来日もしている親日的な協会である。今回のワールドカップを記念して、カーディフに「ミレニアムスタジアム」を新築した。私は期間中、カーディフに滞在して予選ラウンドの試合を目の当たりにし、プレーはもちろん地元の人たちの大会運営への協力など、諸々に感心することが多かった。

 日本人を含む外国人応援団も来ていたが、最も印象的だったのは圧倒的に多い地元の観客である。彼らはウェールズチームの試合だけではなく、他国チーム同士の試合にも足を運ぶ。そして、対戦チームどちらにもファインプレーには賞賛の拍手を、安易なプレーに対しては遠慮のないブーイングをする。

 もちろん、ウェールズ戦においても、相手方に素晴らしいプレーが出れば大喜びし、ウェールズチームが消極的なプレーでもしようものなら、大ブーイングのあらしとなるのである。自国チームの勝利は当然うれしいのであるが、彼らにもノーサイド精神(どんなに激しく戦っても試合後は相手の健闘をたたえ、敵味方なく友好をあたためるというラグビー独特の精神)が、ちゃんと理解され育っている。

 試合後、彼らはそれぞれなじみのパブへ繰り出し、ビール片手に今見た試合の話で名評論家のごとく盛り上がるのである。私たちもパブに行ってみたが、そこではどこの国の人でもラグビー好きは皆友達である。共にラグビーについて、また選手個々のプレーについて、かんかんがくがくの意見を交わし、乾杯を繰り返すのである。

 われわれが日本人と分かると、ウェールズ対日本戦で日本がいかに果敢によく戦ったか、負けは惜しかったがとても良いチームじゃないか、よく来てくれたよ、という具合に話すのである。

 ラグビーの試合を堪能し、パブで余韻を楽しみ、すっかり幸福な気分になって家へ帰る。皆の引き揚げた後は、ごみ一つ落ちていないきれいなままの町なのである。激しい格闘技的な要素の多い印象を与えるラグビーとは、こんなに成熟した大人たちによって育てられたスポーツなのかと、あらためて感心した。

 愛すべき自国のチームが大事なのはもとより、他国チームもそれぞれの国やファンの人たちにとってはかけがえのない大事なチームである、ということをきちんと認めることが、当たり前となっているのである。これが本当のスポーツを愛する人たちの「マナー」であると、つくづく感じ入った次第であった。

(上毛新聞 2001年12月3日掲載)