視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
上州の夏祭り実行委員会・前事務局長 
滝沢 細雪
さん(前橋市天川大島町)

【略歴】嬬恋村生まれ。前橋工業短大卒。東日本デザインビジネス専門学校非常勤講師、建築デザイナー。1999年上州の夏祭り実行委総務副部長、00年、01年同実行委事務局長。


有効的に活用しよう

◎広場

 「広場」と聞くと、どのような場所を想像しますか。都市の建物に囲まれ、アスファルトやれんがなどで整備された場所。自然を生かした公園。あるいは、インターネット上でおしゃべりするサイト。一人一人抱いている「広場」のイメージには、それぞれ違いがあります。大きく分けると「もの」としての広場。「こと」としての広場です。

 群馬県庁舎が新しくなりました。周辺の整備が進められ、今まで駐車場になっていた庁舎前の敷地が広場になる予定です。一九九八年に市民参加型の「広場を考えるワークショップ」が開催され、シンポジウムでこのワークショップは幕を閉じました。その後、より多くの県民が楽しめる広場を造ろうと「広場を考える会」ができました。

 広場とは何か。繰り返し話し合う中で、「意図的に造る物ではなく、自然発生的にできるものだ」という意見が出てきます。井戸や泉があり、水を求めて人々が集まる。人が集まると市がたち、交易や情報交換の場として広場になる。ヨーロッパなどとは違うかたちで発達してきた広場、それは日本を含めたアジアにもみられる路地の一角。井戸端会議という言葉に残されているような、共同体的な空間としての広場。では、今求められている広場とは、どのようなものなのでしょうか。

 私たちの周りを見てみると、自然発生した場所というよりは、むしろ建築的な要素を加味された広場が多くなっているような気がします。建物の敷地の一角を公開空き地として利用しているもの、公園、建物がなくなった空き地を利用した広場などです。木々の多い公園などは親子連れでにぎわっていますが、全ての場所が有効に使われているようには見えません。なぜでしょう。

 広場の造りであったり、建築の法律による有効な土地利用の結果であったり、歩行者の少なさであったりと要素はさまざまですが、せっかくの空間ですから使わないのはもったいない。造られた広場を使える広場にするのは、使う人の意思や意識の問題でもあると思うのです。

 情報化社会の現在は、人と会わずに意見交換ができます。しかし、より相手のことを理解しようとすると、その人に会って話がしたくなり、空間を共有したいと思うようになるのではないでしょうか。

 日本の都市のあちらこちらで、広場を持ち合わせの場として利用している光景を目にします。広場は人との出会いの場であり、情報交換の場所であることは、昔も今も変わらないのです。無意識のうちに、人々は広場に集まります。広場とは人を引きつける魅力を備えてきたのです。だからこそ、広場にはさまざまな動きが起き、新しい出来事が生まれてきたのです。

 人工的に造られた広場にも表現としての動きが求められ、そしてその場所は一種の都市のランドマークにもなっていきます。小さな空間から大きな広場まで、さまざまな使い方ができる可能性をもった空間なのです。

(上毛新聞 2001年12月5日掲載)