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県老人福祉施設協議会会長 
大林 美秋
さん(吉岡町小倉 )

 【略歴】専修大経済学科卒。社会福祉法人・薫英会の知的障害者施設、薫英荘指導員を経て特別養護老人ホーム船尾苑苑長。93年から県老人福祉施設協議会会長。現在、県社会福祉協議会副会長。


ソフト面の意識改革を

◎介護サービス

 一九六二年、米国のケネディ大統領は、これから迎えるであろう消費社会への政策として、議会に対し「消費者の四つの権利」として政策提言を行った。「安全である権利」「情報を得る権利」「選択をする権利」「苦情を言う権利」である。言い換えるなら、これらの権利を消費者自身がきちんと行使できることが、暮らしやすい快適な社会がつくられることにつながる、と約束したのである。米国の発展もパイオニア精神としての国民性というだけではなく、根底にはこれらの消費者の権利行使ができたからとも言えよう。

 例えで恐縮であるが、街に一軒の靴屋しかなく、他の街の情報も無い時代、どこへ行っても同じサイズ、同じ形の靴しか売っていなかったとしたら、どうであろうか。この「靴」しかないのだから、形や色どころかサイズが多少合わなくとも、靴に足を合わせて履きなさい、ということになってしまうであろうし、その靴も数が少なければ、売り手側も売ってやるという姿勢になるであろう。

 物や情報が少ない時代には、生産者の立場やサービス提供者側だけの論理で、経済活動や消費者の消費行動が組み立てられている。「消費者の権利」の一つが行使できなくても、「靴」に例えるように、消費者自らが体を合わせるというような窮屈な生活が求められるのである。

 ところで福祉の世界ではどうであろうか。社会福祉の大改革である介護保険制度が、スタートして二年が過ぎようとしている。利用者本位、自己決定の原則などを中心に、介護保険は要介護高齢者の自立支援を目的として、措置(税金)によるサービスから保険制度による個別な契約制度へと変化した。急激な制度改革にしては比較的に混乱無く始動したという評価もできるが、しかし福祉の現場ではどうであろうか。日ごろより考えさせられることが多い。

 戦後の救貧対策からスタートした福祉制度ではあるが、時代の変化や福祉の一般化、介護保険の導入等により個別性の高いケアと生活の質そのものが問われてきているのである。普遍的な大きな課題が解決すると、問題は個別的で多様化すると言うが、まさに生活という定義が救貧対策的要素から要介護高齢者になっても、充実したその人らしい個性豊かな生活の継続へと変化したあかしと考える。

 介護保険制度導入により、家族や特定の人たちによって行われていた介護が、社会全体で支え合う仕組みとして動き出した。介護保険料を納め、利用料を支払うことにより、介護サービスの消費者になったと考えるべきであろう。

 福祉サービスを受けることが社会にとって特別なことでなくなったからには、前述した「消費者の四つの権利」を「介護サービス消費者の四つの権利」と言い変えてはどうであろうか。課題はこれからである。

 介護サービス消費者の権利が、自由に行使できるよう介護に対するソフト面での意識改革を求められているのは、われわれ福祉関係者である。施設整備計画の年度を変更してでも、特別養護老人ホームなど足りないサービス基盤を、必要とするところへ早急に整備することも、介護サービス消費者の権利行使には必要不可欠なことと考える。

(上毛新聞 2001年12月20日掲載)