視点 オピニオン21
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臨床心理士
樺沢 徹二
さん(渋川市行幸田 )

 【略歴】東京学芸大卒。61年渋川北小を振り出しに教職に。98年渋川古巻小校長で退職。教育相談に携わり、退職後はスクールカウンセラー。東京学芸大、高崎経済大などで講師を務める。


互いの教育力の活用を

◎学校と家庭

 人は、だれでもよりよく生きたいと願っています。私たちは日常生活の中でさまざまな問題に直面しますが、通常は自力で解決しています。時には解決に行きづまることもありますが、そんな時には、自分の生き方の座標軸をもちながら、その軸を少し移動させて、別な視点から問題を見ると、解決の糸口が見いだされ、さらによい生き方ができるようになります。

 スクールカウンセラーとして学校の教育活動に参加しながら、心理臨床という視点から学校を見ると、教師として学校の内部でお世話になっていた時とは異なった、学校にある新たな良さが見えてきます。教職員が児童生徒の教育にいかにエネルギッシュに、愛情と使命感をもって取り組んでいるかが理解できます。さらに、子どもたちが相互に強く影響しあいながら、力強く成長していることもわかります。

 今日、学校は不登校やいじめの問題、校内暴力等、憂慮される状況にありますが、特定の問題に限って解決策を論じても、堂々巡りをしてしまいます。学校がもっている健康な部分を強める努力をしていることにもっと着目すべきです。教師と児童生徒、親と子どもという関係に加えて、子どもたち同士がよい影響を与え合い、健康に向かう力を発揮し合う力の存在に、もっと着目していく必要があります。この部分の拡大と深化を促すことによって、諸問題が解決することが少なくありません。

 今日、不登校の問題は学校教育にとって、解決を急がねばならない最重要課題の一つです。登校することに困難な子どもの保護者は、何とか登校してほしいと願う思いと、子どもの辛い気持ちを理解し守ってやりたい、という思いとがあります。とくに、後者は学校の決まりや友人関係、学習課題等、登校するのにはあまりにもハードルが高いので、遅刻や早退、私服通学等を認めるなど、受け入れに配慮するよう学校に求めます。

 学校は児童生徒の社会的資質を高めるため、学校における社会生活を充実させて、多様で複雑な一般社会に適応する力を培っていく役割があります。そこで保護者の期待通りに対応することが困難となります。家庭も、子どもを守りながら社会化させていくよう努めています。

 学校も家庭も、子どもたちによりよい生き方ができるよう支援するという点では同じですが、両者の機能の相違が十分に理解がされず、相互に不信感を招くことになります。学校も家庭もそれぞれの役割を果たすことに軸足をおきながら、両者の役割や機能の違いを理解し、それぞれがもつ教育力を活用できるようになると、一層安定した教育環境が生まれてきます。

 自らの自尊心を尊重し、感性や思考力のバランスを維持しながら全体的状況、つまり時間的、社会的、文化的な視点に配慮して問題に向き合うと解決が促されます。


(上毛新聞 2001年12月22日掲載)