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木工家 
大野 修志さん
(上野村新羽 )

 【略歴】北海道生まれ。千葉、東京での生活を経て89年に上野村へ。村森林組合銘木工芸センター勤務後、92年独立し「木まま工房」設立。県ウッドクラフト作家協会事務局長。村木工家協会副会長。


長く愛される製品を

◎木工業

 私は、木工の仕事をしています。主に子供が使う家具や玩(がん)具を中心に、一般家具、生活雑貨などを製作、販売しています。

 木工という仕事、すなわち木を使ってさまざまな物を造り出す作業は、私たちの生活の中で、昔から行われてきた仕事です。衣・食・住という生活基盤にかかわるすべての生活用品の一部を、自然から頂いた樹木を利用して創作していきます。そして、その作品は、家具、器、装飾品など、人々の生活をより良くするものとして生まれてきました。今日に残されている伝統工芸の添器や指物(さしもの)など、そのかたちや技のすばらしさも、このことを物語っていると思われます。

 しかし、戦後の復興に伴う生活意識の変化の中で、木工の仕事も様変わりをしてきました。低価格で見栄えのするような木製品を必要とする、庶民感覚に合わせる木工が盛んになり、新しい産業という発展をしてきました。合板の技術や塗装の技術も発達して、見た目にすばらしい木製品が、人々の生活に受け入れられたわけです。

 やがてプラスチックや鉄など、木にかわる物質が入って来ると、木製品に対する興味が失われてきました。でも、これは興味が失われたというより、もともと必要であるというだけでの木製品だったのです。

 近年、バブルの崩壊ということもあって木工産業も衰退してきました。産業としてこれからの木工を考える時、おのずと制約が出てくると思います。今現在もそうですが、それは資源の問題です。人間が生きる時間と、樹木の育つ時間には差があります。木が育つ時間以上に「消費」という形で木を利用すれば、資源はなくなってきます。資源が減ることにより、木材の価値は上がります。そして、高価な木材を使って製品を作れば、ただ高価な品物になり、だれもが使える木製品にはなりません(製品の価値、価格については、さまざまな基準があり、一概に良しあしは言えません)。

 逆に安価な物づくりを考えても、それはできないことではありませんが、先ほどのような魅力のない、飽きてしまう物になってしまいます。ですから、木製品は「消費」する物であってはいけないのです。

 作り手は、自分たちが共に生きている自然環境の中で育った樹木を、利用させてもらっていることをしっかりと思い、大切に扱い、長く愛されて使われる製品を造り出さなければなりません。そして、自分の作った製品を人々に直接見てもらい、その気持ちを一緒に伝えることで、使ってくれる人は、大切にしてくれるでしょう。

 私は、木工は大きな産業でなくていいと思います。小さな個々の仕事が基本であり、その個々が多くなることにより、社会の中でしっかりとした大切な産業に発展し、人々に豊かな生活をもたらしてくれると考えます。

(上毛新聞 2001年12月24日掲載)