視点 オピニオン21
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社会保険労務士
板垣 忍さん
(前橋市文京町 )

 【略歴】前橋高、明治大卒。75年に板垣労務管理事務所入所、同副所長を経て、同代表取締役。県社会保険労務士会前橋支部長、前橋青年会議所41代理事長、前橋まちづくり協議会副会長。


安心して暮らすために

◎年金

 「いやーっ、まいったね、景気悪くって。また営業会議で怒鳴られちゃったよ。その上、女房から再度の“小遣い減額宣言”されちゃってさ。もう、踏んだり、けったり、転んだりだ。オレなんて、悲惨が服着て歩いているようなもんだよ」

 「あら、私たちだってチョー&チョー大変なんだから。最近、あのぽんぽこ部長ったら、やたら機嫌悪いじゃない。そのくせ時々ヤラしい目付きで私たちのことを見てさ、絶対セクハラよね。いつか訴えてやる」
 「あれーっ!」
 「なーに。どーしたの?」
 「これ見て。この週刊誌の今週の特集『みんなでやめちゃおう―年金はもうダメだ』だってさ」
 「うへ〜、年金つぶれちゃうの? 厚生年金、お前もか!」
 いえいえ、ご心配なく。日本の社会全体で世代間扶養の仕組みをとっている年金制度は、日本が存続する限りつぶれることはありません。

 「世代間扶養って何なの?」
 私たちが現在納めている保険料は、私たちの貯金として保管されているわけではなく、私たちのおじいちゃんおばあちゃんの年金として使われています。そして、私たちが受け取る年金は、子供たちや孫たちが負担してくれる保険料でまかなうというシステムのことです。これを社会全体で実行していけば、破たんはないということになります。ただし、少子高齢社会により、支える方も支えられる方も“小遣い減額宣言”は必要となるでしょう。
 「だけど、企業年金は解散してるところもあるよね」
 企業年金は、企業が負担する掛け金が運用されて戻ってくる仕組みなので、企業の業績や資金運用の悪化の影響を直接受けてしまうため、やむなく解散しなければならない場合があります。しかし、社会全体で行うシステムが確立している公的年金は、一企業の業績に左右される企業年金のように解散することはありません。
 「国民年金保険料の滞納者がいっぱいいるって聞いたけど、大丈夫?」
 現在未加入者・未納者を合わせても、全体の五%程度です。未加入者や未納者には、将来の年金給付は行われません。きちんと納めている皆さんだけが受ける権利を持ちますので、いわゆる<ただ乗り>は生じません。

 「でもさ、何があっても不思議じゃない世の中じゃん。年金なんて当てにしないから、保険料を納めないってことにしようかな」
 あなたのお父さんやおじいちゃんは、年金をもらっていませんか。もし未加入者・未納者だったら、あなたが携帯電話を我慢して、仕送りしなければならないのでは? 将来、あなたの子供や孫に「おじいちゃん年金ないんだ。メンドーみてよ」なんて言えますか?
 不安な将来を安心して暮らしていくために、みんなで年金について考えてみましょう。

(上毛新聞 2001年12月25日掲載)