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群馬創玄書道会会長 
高草木 恒彰さん
(大間々町大間々)

 【略歴】桐生高卒。42年間、大間々町役場に勤務する傍ら、文化勲章受章者、金子鴎亭氏に師事し書道を追究する。県書道協会理事。県書道展運営委員・審査員。二葉書道会主宰。


読める書を目指したい

◎書道

 二十世紀は文明が発達し、特に経済的な面や、物質的な豊かさは満たされてきました。その半面、精神的な豊かさはどうだったのだろうか、と問われております。

 二十一世紀は「心の豊かさ」や「伝統文化の高揚」、また「情操教育」の重要性が、盛んに叫ばれております。どうして今更、という感じもしないでもありません。

 なぜならば、心の豊かさとか文化の高揚などということは、こうあるべきだなどというものではなく、私たち日常生活の中から自然に生まれてくるものであって、結果的に見てよかったといえるものではないでしょうか。

 私たちが子供のころは、学校から帰るなりカバンを放り出して、地域の仲間とまとまって遊んだものです。その中でも上級生のリーダーがいて、上級生と下級生との決まりごと、して良いこと、悪いことなどを遊びを通してそれとなく教わり、自然と体で覚えさせられたものです。いま思えば、地域で教えられる情操教育の一端でしたね。

 今の子供たちに聞くと、勉強塾通いが忙しく(それも低学年化している)、友達と遊ぶ暇がないと聞きます。これではいくらゆとりの時間があるとはいえ、何なんだろうと考えさせられます。

 伝統文化といえば、書道もその一つにほかなりません。日本に漢字が移入され、さらにそれを元に日本人の英知により、「ひらがな」や「かたかな」が生まれ、日本の文字文化が発展してきたことは周知のことです。漢字文化と申しますが、実は漢字仮名交じりの伝承文化であり、近代化した明治教育より取り入れられ、現在に至っております。

 書道を志す者にとって、文字は根源であり、また大切な次世代へと残していかなければなりません。

 一口に書道というと、漢字ばかりの世界と一般的には見られておりますが、実は教育を受けてきたのは口語体文章(漢字仮名交じり)であります。教育の現場では、今もって中国の古典、あるいは平安朝時代の仮名の古典(変体仮名)を中心としています。

 本来、文字というのは、社会生活で必要な決まりごとを文章化したり、あるいは自分の考えを相手方に伝えるためのものであります。従って、読めなければ意味がありません。近年、各地で盛んに書展が開催されております。読める書をめざして書作している団体も、かなり増えてまいりました。

 現代の詩や短歌、語り言葉をごく平易に書作していくことをしていかないと、ますます書は一般大衆と乖離(かいり)してしまうのではないでしょうか。書の一般大衆化を目指し、文字文化の必要性にこだわりたいと思います。
(上毛新聞 2001年12月28日掲載)