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福祉住環境コーディネーター 
松本 賢一さん
(新町)

 【略歴】高崎高校、早稲田大学卒。セイコーエプソンに勤務していた間、エプソンドイツ(デュッセルドルフ)に出向。89年、家業を継ぐためマツモト家具店に入社。00年度新町商工会青年部長。新町商店連盟理事。


機能の低下補う工夫を

◎高齢者の住環境

 家具店の営業を通じて、立ち座り動作や身動きさえも痛みのために困難で、日常生活に支障をきたしている人の多いことを、以前から感じていました。

 私たち日本人は、伝統的に畳に座り、冬はこたつを愛用するという生活をしてきました。疲れたときにはすぐ横になれるし、足がとても暖かいというメリットがあります。しかし、体の重心が低いので、立ち上がりには体に強い負荷がかかります。そこで、ここ数年、こたつで使えるいすが欲しいというリクエストが大変多かったのです。

 このイスの座面の高さが問題で、食堂のいすのように四十センチの座面高さだと、こたつには入れません。かといって十センチほどですと、立ち座りが楽になるほどのメリットがなく、わざわざいすを使う意味がありません。そこで、二十五センチほどの座面高さのいすを妥協点としておすすめしております。重量も重いと掃除の際などに移動しにくいので、比較的軽いラタン(籐=とう)製の物がよく求められています。

 これは、ほんの一例ですが、加齢とともに、今まで当たり前であった日常動作が困難になり、住み慣れた住宅や生活スタイルとそこで暮らす人の身体的状況が、適合しなくなってきています。こんな日常生活を快適にするための解決策を求める、比較的高齢のお客さまが増えてきたのは、日本が高齢社会になったからです。

 平成十二年四月には、介護保険法が施行になりました。この制度の中に、問題に対処する施策があります。住宅改修工事、福祉用具購入、福祉用具貸与などです。私もこの制度を利用することにより、日常生活に不便や不都合を感じている人のお役に立てるよう、また住み慣れたわが家、わが町で少しでも良く安心して暮らしていただけるよう取り組んでいます。

 その取り組みの一つとして、福祉住環境コーディネーターがあります。これは、十一年五月から東京商工会議所が実施を始めた検定試験です。身体機能の低下に伴って、感じるようになった不都合を住環境設備により、解決することができますが、具体的にどうしたらよいかはまだあまり一般には知られていません。

 本格的な改築が必要なのか、工事不要な福祉用具を利用することで済むのか、必要な期間だけ借りることも選択肢となりますし、単に家具のレイアウトを変更することで済む場合もあります。しかも介護保険を利用すれば、制度の規定の中で、自己負担も一割で済むものもあります。

 また、予算に応じて、必要な改修個所のうち一部のみの施工でも、何もやらない場合よりも著しく安全性が増すこともあります。このようなことの相談に応じ、各専門職間の調整をし、生活者の立場で解決策を講じていくことがその役割です。

 まだ、その存在さえもあまり知られておりませんが、今後の高齢社会を考えると、重要な役割を担うものと考えます。どうか、必要に応じて利用し、育てていただけたらと思います。

(上毛新聞 2002年1月8日掲載)