視点 オピニオン21
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パーソナリティー
久林 純子さん
(高崎市貝沢町 )

【略歴】高崎女子高校、国学院大文学部卒、県立女子大大学院日本文学専攻修了。ラジオ高崎アナウンサーを経て現在フリー。「温故知新・老舗めぐり」「どこ吹く風」などを担当。県観光審議委員。




P2語録

◎自分加減を発揮すべき

 日常生活を切り取る何気ない言葉で、いかにリスナーさんたちに共鳴してもらえるか、起きてから寝るまで楽しみながらのネタ探し。時には就寝中の夢までも商売道具にしてしまう、それが私流パーソナリティーのやり方です。体験に準拠し、自分で考えて感じた自分の言葉。その数々を仮にP2語録と言い換えてみます。

 番組の中で私は「P2(ピーツー)」というニックネームで呼ばれているわけですが、これは当時小学六年生の女の子が名付けてくれたもの。寄せられるFAXやメールを見ると、なんとまぁ四歳から還暦の方までという幅の広さで聴いていただいているのだと、ひたすら頭が下がります。そんな皆さんへお届けしたP2語録の一つに「いい加減」なるものがあります。私が言いたい「いい加減」は、おざなり、投げやり、無責任という意味ではなく、物事の程度がちょうど「良い加減」ということ。昔から湯加減、さじ加減、火加減とあるように、適温適量というものは、あいまいに感じるけど、実はその人の感覚にゆだねるのが一番合っているように思えるのです。

 情報化された現代社会、なんでも平均値が一番で、テキスト通りであれば間違いはないと、錯覚している人がとても多いように感じます。それは現代人の自信喪失の表れなのかもしれません。でも、情報というのは、一度他人の頭を通って発信されているものですから、百パーセント受け売りばかりしていると、そこにはいつまでたっても「自分」が介在していかない。もっと自分を信じて、自分加減を発揮してほしいものです。

 そんなP2加減を常に考えながらマイクに向かっていたら、とても広い幅のリスナー層ができていました。うれしい誤算です。もちろん、P2語録がお嫌いな方がいるのもわかっているので、加減しながら番組を製作しています。

 でも、いくら考えても感じようと思っても、百聞は一見に如(し)かず、体験に勝るものはありません。今回、出産準備のため番組を降板したことで、見えたことがたくさんありました。妊婦というのは、電車の優先席に堂々と座れるようにみても、社会的に保護される存在のようです。でも、ほとんどの方が席を譲ってくれるということはありませんでした。スーパーで買い物をしていても、レジから袋に詰める台まで、重たい買い物カゴを運んでくれた店員さんは数えるほどしかいません。でも、これは仕方のないことなのかもしれませんね。私も妊婦して初めて「こんなに町の中には妊婦さんが多いのか」と驚いたぐらいですから。
 自分がその立場になかった時は、視界に入っていても見えていなかったのですね。今まできっと妊婦さんを前に、思いやりの行動ができていなかったのだと思います。ごめんなさい。さて次はP2ママとして、身から出た言葉がたくさん使えるといいなぁと思っています。


(上毛新聞 2002年1月22日掲載)