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医療法人ラホヤ会道又内科クリニック理事長 
道又秀夫さん
(高崎市柴崎町)

【略歴】日本医科大卒。群馬大第一内科に入局後、伊勢崎市民病院、前橋赤十字病院などに勤務。98年1月、国立がんセンター出身の妻、かおるさんとともに開業。アレルギー科・呼吸器科専門医。


肺がん検診

◎専門医が実施すべき

 最近の肺がんの増加は著しいものがあり、その死亡率も高く、早期発見の手段が求められています。肺ドックはそうした早期肺がんを発見できる唯一の方法で、特殊プログラムによるヘリカルCT検査と喀痰(かくたん)細胞診と呼ばれる痰の検査を組み合わせたものであります。

 これでどの程度の肺がんが発見できるかというと、肺の周辺部のがんではおよそ五ミリ〜一センチのものが見つかります。また、喀痰細胞診では、たばこによる肺がんが多いのですが、肺の中央部のがんが見つかりやすくなります。この二つの検査を専門医が診断することによって、今までの胸部レントゲン写真による検診と比較して、実に八十ポイント以上の生存率の上昇となることが報告されています。

 胸部レントゲン写真で発見できる肺がんは、専門医の診断で一・五センチ以上、一般医ではレントゲンの装置の精度も関係しますが、約二センチ以上の大きさでやっと見つかるといわれています。

 では、このヘリカルCTで見つかる五ミリの肺がんが、どのくらいの期間で一・五センチまで増大するかというと、約三年かかるといわれています。つまり、一般のレントゲン検査で発見できる肺がんが、三年前に発見されるということです。したがって、早期に肺がんを発見でき、手術可能で高い生存率が期待できるということです。

 現在の一般レントゲン検査でみつかる肺がんは五年後の生存率10%程度であると報告されていますが、国立がんセンターグループの報告によれば、ヘリカルCT、喀痰細胞診による検診では、現在まで約八年間で生存率90%以上となっております。

 しかしながら、検診の現状は、肺がんの検診だけではなく、一般の検診でも胃がん、大腸がんの検診でさえ専門医が診断を下していることは少なく、専門外の医師が行っている場合がほとんどです。

 このような状況で、職域で行われる検診、地域で行われる検診は、果たして意味のあるものであるか疑問です。結核が多かった時代の検診体制で早期肺がん、つまり救命できる肺がんを見つけることは、困難であると言わざるを得ません。では、いったいこれらの検診は、何を目的としているのでしょうか。

 検診をすれば、現在の医療費の上昇を抑えることができるのでしょうか? 答えは否です。以前に人口の出入りが極めて少ない地域で研究がなされており、検診を定期的に行っている集団と、全く検診を行わなかった集団との間では、それぞれの集団の総医療費を比較すると、検診を行わなかった集団の方がはるかに少ないと報告されています。すなわち、検診は医療費の軽減には全く役立たないということで、先進諸国ではこのタイプの検診は行われていないのが現状です。

 検診を行うならば、きちんと目標を決めて専門医が行うのでなければ、意味がないと考えられます。肺がんはもとより、がん検診に関して詳しくは当院のホームページ(www6.ocn.ne.jp/ ̄lajolla/)で御覧ください。




(上毛新聞 2002年1月31日掲載)