視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
赤城高原農業観光協会長 
後藤 忠彦さん
(昭和村糸井 )

【略歴】利根農林高卒。元同村農業委員。昭和村りんご研究会の会長を務め、農業の新技術導入など研究。赤城高原農業観光協会の初代会長に就任。昭和村議。
文字数  1359 著


環境保全型農業

◎消費者に体験と理解を

 県の北部に位置する昭和村は、県内でも有数の農作物の産地ですが、それを知っている人は少ないようです。それは、農家による情報発信が、これまではあまり行われてこなかったからです。農家の人たちでさえ、自分が作った農作物を、だれがどのように食べているのか、ということを把握している人は少なかったようです。

 現在の農業は多様化が進んでいます。消費者のニーズに合わせ、作られる作物も変わってきました。栽培方法さえ変わり始めています。

 近年、環境に優しい技術が相次いで開発され、環境保全型の農業が実践され始めています。それは主に、減農薬・減化学肥料栽培のことで、環境、食べる人、そして作る人にも優しい栽培の方法なのです。

 しかし、それには手間と費用がかかります。それでも環境保全型農業を進めていかなければならない状態に来ているのです。これまで農業は、省力化を図るために農薬や化学肥料を大量に消費し、大規模化を進めてきました。

 しかし現在、それらが地球の自然環境に与える影響が小さくないことが分かってきました。その上、人体にも影響があり、子供たちの未来にまで響いていく可能性があるものです。現在でも、どの物質がどれほどの影響があるのか、分かっていません。それなら、なるべく環境や作る人、食べる人に優しい農業をしていくしかないのです。

 ただ、それを言葉だけで理解するのは、大変難しいことです。そこで、こう考えます。畑で野菜を作ってみなさいとは言いません。でも、畑の中に入って来てほしいのです。一年に一回でもかまいません。農作物がどのようにして作られるのか、少しでも分かってもらいたいのです。頭ではなく、心で感じてほしいのです。

 子供たちの頭と心はとても柔らかく、たくさんの情報を無意識に欲しがっています。でも、農作物がどのようにできているのか、子供たちにきちんと説明できる人が、どれだけいるでしょうか。子供だけでなく、大人も農業について、もう少し考えるべき時に来ています。安いから、高品質だからという、一面だけでとらえるのではなく、トータルに考えなくてはいけない時期に来ているのです。

 そこで、農家の出番です。農家側、生産者側からの情報発信をしていく必要があります。難しいことは言えなくても、きちんと現状を説明し、伝えるべきなのです。そのことによって、お互いが理解する第一歩になると思います。

 幸いにも、その環境は整いつつあります。インターネットでは、地域や各農家の情報、農作物のレシピや旬などの情報を、学ぶことができます。農作業体験をする環境も整いつつあります。体験を提供する農家と、受ける側の消費者の意識が変わり始めているのです。

 楽しみながら学べばいいのです。堅苦しく考える必要はありません。つらい作業をすることもあえてする必要はないのです。その農作物がいつ、どうやって、だれが作っているのかを伝えることができるなら、得るものは大きいのです。私たちは物を作り、売るだけでなく、情報を発信していきます。


(上毛新聞 2002年2月8日掲載)