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社会保険労務士・板垣忍郎さん(前橋市文京町 )

【略歴】前橋高、明治大卒。75年に板垣労務管理事務所入所、同副所長を経て、同代表取締役。県社会保険労務士会前橋支部長、前橋青年会議所41代理事長、前橋まちづくり協議会副会長。



少子化

◎不利益や不都合生じる

 「弱っちゃったよ。息子の学校でPTAの役員やってくれって言われちゃってさ」

 「ほんとかよ。人材不足極まれりってとこだな。だけど、おれたちサラリーマンが、そうゆうのやるって大変だよな」

 「そうだよ。おれたちの子供のころって、地域じゃ結構有名なおじさんが、貫録たっぷりにやってたじゃん」

 「そうそう、運動会の時なんかテントの中でどっかり座って、存在感あったよな」

 「そういえば、運動会も昔の迫力ないよ。子供の数がめっきり減っちゃって、小ぢんまりしちゃったって感じ」

 「子供の数が少ないってことは、子を持つ親の数も減っちゃったってことかい」

 「それもそうだけど、結婚しないってゆうか、できないってゆうのか。随分増えてるよね、お前みたいなの」

 厚生労働省が発表する『日本の将来推計人口』によると、これまで一・六一で長期的に安定すると想定してきた合計特殊出生率(一人の女性が生涯にわたって産む子供の数)が、一・三九へと大幅に引き下げられました。

 現状の人口を維持していくためには、二・○八の出生率が必要とされています。夫婦二人で子供をつくるわけですから、一組の夫婦で最低二人つくってもらわないと、現状維持ができないということです。前回、五年前の推計では、<出生率の低下は晩婚化のためで、結婚した人の産む子供の数は同じ>という発想から、二○○○年の一・三八を底として○五年には一・六一まで回復し、そこからは安定すると推計されていました。

 しかし、実際には九九年に一・三四まで落ち込んでしまい、(1)結婚したカップルの出生児数が減少している(2)平均初婚年齢がさらに上がっている(3)未婚率が上昇している―という新たな状況判断を踏まえ、将来の出生率を下方修正したものとなっています。

 「あっ、そう。それならますます少子化が進むってことだよね。困ったな、PTA」

 ものすごく困ったことになります。PTAはもちろんそうなのでしょうが、私たちの暮らしに直接さまざまなところで不利益や不都合が生じて、価値観さえも変えないと暮らしていけないことになってしまうでしょう。

 将来の日本経済・社会を支えていく年齢層が少なくなってしまうわけですから、労働力の減少による経済活動の低下や、公的年金などの社会保障制度を維持していく現役世代の負担増など、深刻な見直しを迫られています。

 そういえば、昔いましたよね。やたらと写真を抱えて親せきや知り合いをぐるぐる回っている、親切というかおせっかいというか、どう転んでも憎めない底抜けおばさん。丁寧に育てられ過ぎて仮想世界の中で生きてきてしまい、現実にそこに立っている女性とどう付き合ったらいいのか分からなくて〈ウロウロしている愛すべき若者たち〉の背中を押してあげる運動とかが、あってもいいんじゃないでしょうか。




(上毛新聞 2002年2月24日掲載)