視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
富岡丹生小学校長 新藤建也さん(富岡市藤木 )

【略歴】東京理科大学を卒業後、教職に就き、98年から現職。専門は数学だが、学生時代から作曲・編曲、絵画など芸術に親しむ。丹生地区が公募した詩に曲をつけた「ほたるの里」などが代表作。


完全学校週5日制

◎重要さ増す親の役割

 学校週五日制完全実施を迎えて、家庭や地域社会における親の役割はますます重要になってくることが予想されます。

 親はわが子に期待をかけ、さまざまな願いをこめて子育てをします。子どもの教育を、家庭と地域社会と学校が一体となって進めていかなければならないことは言うまでもないことです。

 しかし、親の期待ばかりが強くて、家庭が学校や塾などに期待をかけすぎてしまい、家庭がやるべき基本的な教育をないがしろにしている例は少なくありません。親が、俗に言う教育費を稼ぐことばかりに目を向けてしまい、直接子どもと触れ合う時間を失ってしまうことも少なくないようです。これでは、限られた時期にしかできない「しつけ」のための場までも逸してしまうことにもなりかねません。

 「子どもがなにを考えているのか全くわからない」とか、「このごろの子はなにをしでかすかわからない」とか、「本当に子どもがかわってしまった」などという声をよく耳にします。「すぐきれる子ども」「我慢ができない子ども」「人の話が聞けない子ども」「自分勝手な子ども」などさまざまな子どもの姿が考えられます。

 このような子どもが増加している要因として、子どもの生活の背後にある社会の変容がよく挙げられます。子どもの直接体験より、いろいろなメディアによる間接体験が優先することによって起こる心の弊害を指摘していることが多いようです。

 しかし、重要なのは親がどう子どもとかかわっているかであり、子どもの生活の中における改善こそが必要であると考えます。改善のために、家庭が果たす役割は大きく、親の出番が必ずあるはずです。

 子どもたちは、休みが多くなったら、「あれもしたい。これもしたい。いや、おもいっきりリフレッシュしたい」などと、思いをめぐらせています。大人から見ると、「そんなこと…」などと思われることもあります。

 しかし、子どもにとっては大切なことが多いのです。子どもには子どもらしい夢や希望があります。あふれるほどの夢をめぐらせることは子どもの特権であり、また、子どもの精神活動の特徴でもあります。

 親がこのことをよく理解して子どもに接することが重要であり、そうすることで、子どもは自分を伸ばそうとする意欲を増し、子どもの自分づくりの営みがより充実したものになるのです。

 今、学校週五日制にかかわって学力の低下を危惧(ぐ)する声をよく聞きます。単なる知識量としての低下は予想されます。そのことがすなわち学力の低下になるのでしょうか。

 これからの時代を生きるために必要な学力は、単なる知識の量で量れない「生きる力」につながる真の学力であると考えます。真の学力を培うために、新しい学校教育が盛んに進められています。休日のあり方を見直して、親をはじめとする大人たちが、望ましい子ども環境を築くことが急務であると考えます。


(上毛新聞 2002年3月29日掲載)