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赤城高原農業観光協会長 後藤 忠彦さん(昭和村糸井 )

【略歴】利根農林高卒。元同村農業委員。昭和村りんご研究会の会長を務め、農業の新技術導入など研究。赤城高原農業観光協会の初代会長に就任。昭和村議。


グリーン・ツーリズム


◎自然の素晴らしさ学ぶ

 最近、無農薬や減農薬、有機農業、環境に優しい農業と、いろいろな表現がはんらんしています。微妙な栽培方法の違いで、呼び方が変わり、価格も違ってきます。作物によって、病虫害に対する抵抗性が違うので、栽培方法も大きく違ってくるのです。

 例えば、リンゴは病気にも虫にも大変弱い植物です。農薬を散布したり、剪定(せんてい)をしたり世話をしなければ、あっという間に枯れてしまいます。ましてや、販売できる果実を作るには、大変な手間がかかります。アメリカやオーストラリアのように、小ぶりでも、多少傷のものでも許されるなら、手間も少ないでしょうが、日本の厳しい消費者には許されません。しかし、コストをかけても安いものが求められます。しかも安全なものを。

 最近は安全性を求めるため、最新の栽培技術が、利用されています。その一つが昆虫の性フェロモン利用による害虫の防除です。継続して、高価なフェロモン剤を使用しなければなりませんが、人体や自然環境に対するダメージは最小限で済みます。外観が良く、安全で、おいしい物は安くは作れません。手間とお金がかかるのです。

 最近の豚肉、鶏肉など偽装表示問題も同じです。安く、良いものを大量に欠品なくできるはずがないのです。どこかに無理があると、犠牲になっていることがあるのです。この問題が起きた原因の一つは、お互いのおごりです。また、気配りのなさです。この生産者、流通販売業者、消費者の意識のズレをどうにかしなければなりません。

 野菜や肉は工場でスケジュールに沿って作られているわけではないのです。一つ一つの命をはぐくみ、利用させてもらっているのです。

 私たちはグリーン・ツーリズムを通して、いろいろなことを伝えていこうと思っています。グリーン・ツーリズムとは、「緑豊かな農林漁業地域において、その自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動」のことです。今までの観光旅行や休暇の旅行と違う点は、体験(学習)を伴う旅ということです。

 グリーン・ツーリズムの一番の指導者は自然です。自然の中で、自然に触れ、自然の素晴らしさ・大切さを学び、自然の恩恵を見詰め直すことができます。日帰りや、数泊間の短い間でも農林漁業の疑似体験を通じ、参加者(消費者)に農林漁業の一部分でも理解を深めてもらうことに意義があるのです。

 また、グリーン・ツーリズムの体験を通し、環境問題を見詰め直すきっかけになればと思います。

 私たちは生産者として、消費者の皆さんに伝えなければならないことがたくさんあります。また、学ばなければならないこともたくさんあります。ぜひ、一緒に学んでいきましょう。


(上毛新聞 2002年4月6日掲載)