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社会保険労務士 板垣 忍 さん(前橋市文京町 )

【略歴】前橋高、明治大卒。75年に板垣労務管理事務所入所、同副所長を経て、同代表取締役。県社会保険労務士会前橋支部長、前橋青年会議所41代理事長、前橋まちづくり協議会副会長。


おかしな話


◎保険きかない治療法 

 「あれ〜、なんか変だなって思ったらメガネがないじゃん。ど〜したの?」

 「えへへ、実はね、レーザーで治療したんだ。メガネいらなくなっちゃった」

 「つうことは、よく見えてるってこと?」

 「ウン、両目とも1・2になっちゃった」

 「へえ〜、今までどのくらい悪かったの?」

 「0・05。お前みたいに、目だけはいいやつには分かんないだろうけど、なんか生き返ったって感じ」

 「相変わらず大げさなやつだなぁ」

 「いやいや、そんなことないよ。温泉なんか行っても、見えてないから結構怖いし、寒い所から急に暖かい所に入ると曇っちゃうし、汗かくとメガネに垂れちゃうから、年中ふいてなきゃなんないし…」

 「まあその程度は我慢しなくっちゃ。オレのかわいそうな人生に比べたらアマイよ」

 「お前の人生がどのくらいカワイソ〜でクライのか分かるけど、目が悪いってのは命にかかわるんだぜ」

 「またまた、言ってくれるじゃない」

 「だってさ、阪神大震災覚えてるだろう? ほとんどの人が寝ている時に、いきなりグラっときたんだぜ。運良く頭の上じゃなくて、すぐ脇にたんすが倒れてきたとするじゃん。うわっ、なんだこりゃって起き上がる。電気をつけるが停電。真っ暗の中逃げようとする。そこでオレはメガネを探す。アレーッ、メガネがたんすの下敷きになってる。マズイ、何も見えない」

 「なるほど。それはかなりカワイソ〜な状況と言える」

 「だろっ そうなんだよ」

 「だけどさ、レーザー治療ってどんなことするの?」

 「目の表面にある角膜をレーザーで削るんだよ。そうすることで屈折率を変えて、像を結ぶ網膜にきちんと焦点が合うようにする」

 「なんか怖そうで、しかも痛そ〜」

 「ところがほとんど痛くないし、治療自体は十分程度で終わるんだ」

 「なんだか良いことばっかりみたいだけど、悪いとこないの?」

 「あるよ。四十歳を過ぎて、近視・乱視を治療して視力が良くなると、急に老眼が表面化するんだ。それと、治療代が高い。四十万円くらいはかかる。保険診療できないんだ」

 「それっておかしくない? なんてったって命にかかわるのにさ」

 「オレたち中小企業のサラリーマンが加入している政府管掌健康保険は毎年赤字。平成十二年度は、千五百六十九億円だった。これだって減ったんだ。十一年度はおよそ倍の赤字額だった。つまり財源がない。だけど、視力0・1未満は病気と思う。労災や厚生年金の障害給付に該当するんだぜ」

 「そうだ そのとおり。そうなりゃあオレだって治療を受ける あれっ、ばれちゃった? オレ、コンタクト。目も悪かったんだ」


(上毛新聞 2002年4月19日掲載)