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NPO法人・環境ネット21理事長 六本木信幸さん(伊勢崎市中央町 )

【略歴】桐生高、明治大商学部卒。76年、ダイエーに入社、10年間勤務する。群馬合金専務を経て、89年からグンゴー社長。環境ネット21はNPO法人として、県内第1号の認証を受ける。


キレる子供


◎健全育成は大人の責任

  子供がキレる原因の一つは、我慢をするという経験量が少なく、耐えるための微量栄養素、亜鉛・カルシウムなどが減少している、といわれています。

 二つ目に、清涼飲料水の飲み過ぎです。清涼飲料水には約10%の糖分があり、吸収性が高いため、恒常的に飲み過ぎていると、血糖値が急に上がります。これを中位に保とうとする時の乱高下時に、アドレナリンという凶暴性を帯びたホルモンが分泌されます。

 三つ目は、環境ホルモンです。朝起きてから寝るまでに、子供は多くの合成高分子化合物に触れています。スチレンやポリカーボネートなどは、油や熱との化合により環境ホルモンが発生し、口や鼻から摂取をして、「何でこんなことをやってしまったんだ」という、見境のつかない行動をしてしまいます。カップ麺(めん)にジュースの朝食は、キレるための補助食品かもしれません。今こそ、昔ながらのスローフードを研究する必要があるようです。

 四つ目は、メディアとのかかわりです。現在のテレビ・ゲーム・漫画・インターネットなど、子供たちにはありとあらゆる情報が二十四時間、何の規制もなく入手できます。「テメー、この野郎、ブッ殺すぞ」などというシーンを、まぶたに残し、床についた時、情緒のある豊かな夢を見るはずがありません。

 昨年『バトルロワイヤル』という、制服を着た子供同士が、銃やかまを持って殺し合う映画がありました。当然、PTA連合会は上映の中止を申し入れましたが、表現の自由ということで、上映されてしまいました。

 私たち大人は、このような子供の健全育成を阻害する情報から断固、保護していく責任があり、テレビの見方や、ゲームの遊び方などに対して、各家庭でルールを作っていく必要があると思います。

 最後に、家庭での食べ物との付き合い方です。食べ残し、賞味期限切れの食品が簡単に捨てられ、生ごみとして自治体が焼却処理をしています。食物は私たちのエネルギーで、自然の恵みです。それを不用となったからといって、ビニール袋に詰めて、焼却場へ送ってしまって良いのでしょうか。そんな大人の無神経な行為を、乳児、幼児期と体験してきた子供たちに、ある日突然、物を大切に、人に優しく自然を愛してと諭した時に、「言ってることと、やってることが違うよ!」という。自然界の声が聞こえてくるような気がしませんか。生ごみに敬意を表して、土に還元しようとするみんなの努力を、自然界は期待していると思います。

 日本と同じくらいの面積の英国には、ごみ焼却場は七カ所しかなく、国土の広い米国でも百七十しかありません。日本はなんとごみ焼却場が千八百カ所もあり、断トツの世界一位であります。この事実を認識して、生ごみは燃やさず、土に返すという行動に移していく中で、物を大切にし、豊かな心をはぐくむ何かが見えてくると思います。





(上毛新聞 2002年4月23日掲載)