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森の遊学舎代表 小森谷 浩之さん(勢多・東村沢入 )

【略歴】北海道大農学部卒。家業の林業、建設業を営む傍ら、01年に村民と自然体験学校の設立を目指すグループ「森の遊学舎」を立ち上げた。東毛地区林研グループ連絡協議会長。


TVゲーム

◎子供たちに多大な影響

 「パパ、パパ! ドアが開かないよ〜。だめだよ! 開けなきゃ〜。殺されちゃうよ〜。エ〜ン、エ〜ン!」。それは午後十一時くらいのことでした。すやすや寝ていた娘が突然叫び、泣き出しました。私たち夫婦は、どうしたのだろうと顔を見合わせました。しかし、すぐに分かりました。この数日、夜は子供を弟に預けていました。もちろん、弟は優しく子供の面倒を見てくれました。でも弟の部屋にはあったのです。TVゲームが…。翌日弟に話を聞くと、娘も見まねでやっていたようです。そのゲームにはいくつものドアがあり、怪物が追いかけてくるものでした。

 夢には寝入りばなに見るものと、目覚め際に見るものがあります。皆さんは朝、なぜかある人が好きになったり、興味がわいたことはありませんか。寝入りばなに見た夢は、潜在意識へと沈んでいきます。そして本人が理解できない部分で現れます。朝目覚めて覚えている夢に対しては私たちは抵抗できます。それが悪いものであれば、意識から排除できます。しかし、寝入りばなに見た夢に対しては無防備です。それは潜在意識下で生息し、繰り返し見ることになれば固定化し、成長していきます。

 今年の冬、石油ファンヒーターを使用している時、子供たちは夜になると咳(せき)が出ました。石油ストーブに替えたところ、咳をしなくなりました。石油ファンヒーターは安全基準をクリアしています。しかし、成長している子供たちにはわずかなガスが、大きな影響を与えるのです。

 TVゲームは子供に良くないと、ほとんどの大人は思っています。しかし、現代の青少年の問題とTVゲームの因果関係を証明することはとても難しいです。しかし、本当に良いのでしょうか! このままで…。TVゲームが幼児の心をむしばみ始めて、二十数年たちます。

 皆さん、現代の男の子と女の子では、どちらが元気だと思いますか。私たちの自然学校に積極的に参加するのは女の子です。さて、男の子と女の子、どちらがより多くの時間TVゲームをしているでしょうか。

 ほとんどの大人がそれは問題だと感じているにもかかわらず、続けていることはたくさんあります。しかし、子供についてのことはそれでいいはずがありません。子供を守れるのは大人であり、地域なのです。

 目には見えないけれど確実に子供たちをむしばんでいるもの、大人には影響は少ないけれど、成長過程の子供たちには多大の影響があるもの、それを取り除いていくのは私たち大人の義務ではないでしょうか。

 TVゲームは一家庭だけでは止めることはとても難しいでしょう。しかし、PTAぐるみでがんばれば…そんなに難しいことではないのではないでしょうか。

 子供の精神がほぼ完成するのは思春期までだと言われています。それまでは、自然の中で遊ばせ、暑い、寒い、痛い、美しいを体感させることが、子供にとっても、そして私たちの老後にとっても、とても重要だと思います。

 自然学校「森の遊学舎」URL http://ugaku.com/

 わが家のHP「麒麟ネット」URL http://kirinnet.tripod.co.jp/




(上毛新聞 2002年5月13日掲載)