視点 オピニオン21
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高崎周辺ダウン症児・者とともに生きる まゆの会代表 
濱村 泰明さん
(高崎市昭和町 )

【略歴】前橋高校、千葉大学人文学部国文学科卒業。東京都内の出版社勤務の後、フリーランス・エディター(書籍編集業)になり、現在に至る。高崎に居住して8年。子ども3人の父子家庭。


長寿センターの開放

◎子どもとの交流の場に

 高崎市に総合福祉センターが二○○六年に造られる予定である。(1)高齢者の介護予防拠点(2)障害者の社会参加と自立支援(3)虐待防止や子育て支援(4)ボランティアなどの福祉人材バンクの拠点―の機能を持つという。

 (1)に関しては、市内に七カ所ある長寿センターを統括するような機能になるというが、障害者については、デイサービスのような機能を持たせる予定はないという。

 二月一日付の『オピニオン』で、高齢者介護と障害者介護は共通点が多く、ノウハウを共有できるので、高齢も障害と考えるべきだと書いた。その点では前進といえるが、それを推し進めれば、長寿センターを福祉センターとし、障害者も利用できるようにすべきだろう。障害児・者のデイサービスセンターは現在のところ一カ所しかない。

 障害者の社会参加を進めるためには、まず障害児・者を地域で育てることが前提となる。近くの長寿センターが利用できるようにすることで、障害児・者の存在を地域の人たちに知ってもらう機会が生まれる。育児のノウハウを教えていただくこともできる。

 一方、とかく閉鎖的になりがちで、年齢層も固定されやすい高齢者とその家族にとってもメリットは大きい。さまざまな年齢層と接することができるし、乳幼児は高齢者に安らぎと活力を与え、「ぼけ」の防止にもつながる。人なつこいダウン症児・者は、喜んで高齢者の相手をしたがるだろう。

 さらに推し進めて、同一敷地内に、障害乳幼児も含めた保育所、学童保育、中学生の放課後施設(障害のある中学生以上の公的な放課後施設がないのは、働く親にとって死活問題となっている)を併設できないだろうか。ホールを共有できれば、人とのふれあいも生まれる。現在、中・高校生の高齢者や障害者の福祉ボランティア活動が行われ、中には一週間程度の義務を課している学校もあるが、核家族と少子化で普段接することがないため、戸惑うことの方が多く、何もできずに終わってしまうといわれる。

 しかし、日常的に接するようになれば、高齢者への尊敬といたわりを覚えるようになるだろうし、高齢者にとっては孫のような存在は活性化にも役立つ。家族に負担が大きく、ともすればこもりがちな障害者介護、老人介護の精神的な軽減にも役立つだろう。

 また、高齢・障害者施設を活用するだけではなく、逆も可能である。中心部では子どもが減少して、空き教室が増えている小・中学校も多い。これを利用して、保育所や高齢者が憩う施設を併設することも考えられる。障害児を含む乳幼児にとっては、近い将来に通う学校になじむことであり、学童にとってはこれから入学するだろう子どもたちを知っておくことができる。また、お年寄りの知恵を教えていただくこともできるだろう。

 これからの地域行政や教育は、単なる「ハコモノ」や機能だけではなく、地域社会の人と人とのふれあいを第一に考えなければならないと思う。



(上毛新聞 2002年5月17日掲載)