視点 オピニオン21
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日本ラグビーフットボール協会理事会計役 
真下昇さん
(横浜市港北区大豆戸町 )

【略歴】高崎市出身、武蔵野音楽大学ピアノ科卒。1974―79年、東京農業大学第二高校音楽科講師、99年度高崎女性経営者研究会会長、92年プチローズ設立、代表。


タグラグビー

◎体を動かすそう快さを

 今春から小・中・高校が土曜休みとなり、週五日制となった。このことは新聞、テレビなどでも賛否、対策など侃々諤々(かんかんがくがく)であった。意見はいろいろあるだろうが、施行されたからにはこの制度が子供たちにとって最良のものになるよう、親、学校、地域すべての人たちが協力していくべきである。そこで私は「自分が関係するラグビーが、この土曜休日を使って普及に結び付けられないものか」と考えた。私の子供のころであれば、学校から帰って外に出れば必ず誰かが遊んでおり、何となくある程度の年齢差のある子供集団ができ、良いも悪いも教わりながら、自然とも触れ合い、体も動かして放課後を過ごすことができた。高校受験も中学三年の夏ぐらいから、また大学受験でも高校三年になってやおら始めても間に合うといった具合であった。

 現在、子供を囲むそれらの環境は昔とは全く異なってしまったが、ゴールデンウイークの期間中、私の家の近くの小学校ではサッカー、横浜国際競技場の周りの広場では少年野球、中学や高校のグラウンドや体育館でも部活動の声が盛んにしていた。子供たちは集団で遊んだり、スポーツを行うことが嫌いなのではなく、環境とチャンスさえあれば体を動かすことが好きである。

 ラグビーは、学校教育の体育の中では正課として採用されていない。指導者不足やコンタクトプレーによる傷害が心配されるためであろう。野球やサッカーに比べると競技人口も少なく、どうしたらすそ野を広げられるかということが、ラグビー協会の最大の課題である。協会の取り組みとして、現在は低年齢の男の子も女の子も安全に楽しめる「タグラグビー」の普及に努めている。タックル、スクラムなどのコンタクトプレーは行わず、ラグビーのだいご味であるだ円のボールを持ち、相手の間隙(かんげき)をついて走り抜けトライをする、そう快さを楽しむゲームスタイルである。グラウンドの広さにあわせ、人数も適宜変更できる。学校の先生方や子供サークルの指導に熱心な人を対象に、指導者講習会を開いたり、地域ごとにあるラグビースクールでのデモンストレーションを兼ねた親ぼく試合などを行っている。

 この「土曜日休み」を子供会や学童保育など、地域の子供の集まりでの催しの一つとして「タグラグビー体験教室」のような企画をしてみたいというところがあれば、ラグビー協会としては大喜びで講師陣を派遣したい。ゲームを通して必要なルールを守ることを覚え、お互い相手のことを思いやる場面も出てくるであろう。体を動かすそう快さも経験し、また勝ったり負けたりすることによる喜びや悔しさも知るであろう。初めは大人たちがこのような場を用意しても、徐々に子供たち自身が自分たちの意見や考えを反映させながら運営できるようになればなお良いと思う。

 タグラグビーの経験者がラグビーの面白さに気付いてくれれば、ラグビー人口も増えるであろう。日本中のいたるところに芝のグラウンドを造り、晴天の土曜日、タグラグビーに興じる子供たちの声でいっぱいにしたいと、私の夢は膨らんでいくのである。


(上毛新聞 2002年5月22日掲載)