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会社役員 佐羽 宏之さん(桐生市相生町 )

【略歴】群馬大大学院工学研究科修了。82年に三立応用化工に入社し現在は専務取締役。一昨年3月まで県中小企業団体青年協議会会長。桐生市市民の声の会サブリーダー。
桐生の活性化

◎人材育成都市を目指せ

 行政と市民の協働を行い、にぎわいのあるまちづくりを進めるとして、桐生にはそのための資源として何があるだろうか。まちの活性化には、このまちを人が訪れる、できれば住み着く仕組みが必要である。従来ならばすぐに工業団地が思い浮かぶ。かつて桐生にも工業団地造成に奔走した時代があった。しかし、従来型製造業の中心が、中国をはじめ海外に移転しつつある現在、認識を改める必要がある。

 ところで、どのような産業であってもその普遍的資源は人材ではなかろうか。現在の経済状況は厳しいが、長期的な視野に立って目指すべきは、人材育成都市の形成であると思う。ものを生み出すには、総合的な知識と技術が必要である。桐生は古くから繊維産業都市として発展してきた。近代の桐生には工業系の教育機関が重点的に整備され現在に至っている。これらの機関を有効に生かし「もの作り専門家」を生み出していくことにより、新規産業を生み出す若い力をこのまちから育てていく構想の提案である。

 現在市内には高校以上の実業教育機関として県立工業高校、市立商業高校と群馬大学工学部がある。新制大学では、四年間の学生生活の中で一年は一般教養課程であり、専門の勉強をする期間は実質的には三年程度である。大学進学希望者は普通高校へ、就職希望者は実業高校へというのがこのところの一般的進路であるが、高校時代の貴重な三年間を受験のための学習に費やし、確たる動機もなく共通試験で大学を選択しているのは誠にもったいない状況である。

 昨今、国立大学の法人化に伴う生き残り策として、大学の合併問題などが出ているが、少子化に伴う学生人口の減少により、彼らから選ばれない教育機関に残る道はない。規模では旧帝大にかなわない地方大学の生きる道は、専門への特化であろう。

 そこで、桐生に実業高校と大学を一体化した、高校からの七年間でもの作りと起業を目指す人材を一貫して教育する教育機関をつくってはいかがであろうか。中学を卒業して起業家や技術者を目指す若者を特色あるカリキュラムで全国から集めるのである。まちでも起業家へのオフィス等の貸し出しを始めたが、さらに新進の起業家が使用できる工場や倉庫を用意するのである。

 全国から十六歳以上の若者が集まり、十年あまりを自然に恵まれたこの地で過ごし、桐生を第二の故郷として実業界へ巣立っていく仕組みづくりである。超高齢化が進む桐生市としても、若年者が流入し活気のあるまちができるであろう。そのためには、現在不足しているインフラを整備することにまちの施策を絞る。まちの中に求心力がある仕組みをつくった上で、外への風穴を開けないと、人は外へと流れ出し戻ってはこない。外への道路整備も重要であろうが、焦点を絞ったまちの充実が先行するべきテーマであると思う。

 まちに人が戻ってくるのは、人生の終わりに先祖代々の墓所のある故郷への帰還、と言うだけでは誠に寂しい限りである。


(上毛新聞 2002年5月29日掲載)