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NPO法人・日本福祉教育研究所所長 
妹尾 信孝さん
(渋川市折原 )

【略歴】亜細亜大卒。難産の後遺症で四肢と言語に障害がある。兵庫県内の知的障害者施設の職員として16年カウンセリングに従事。自らの体験を基に教育、福祉、人権をテーマに講演活動を展開。

子育て

◎親は意識開拓し襟正せ

 子を思い、愛してやまない親の心は昔も今も変わりありません。わが身を犠牲にして子供をかばい、尽くす気持ちは永久不変と言っても過言でないと思います。しかし、最近、親としての務めや役割を忘れてしまっているような傾向が見受けられます。大家族から核家族、少子化と時代とともに親子関係も子育ても様変わりし、わが子に暴力を振るい虐待する親、溺(でき)愛するあまり心を歪(ゆが)ませてしまう親、あるいは子育てを放棄する親も少なくありません。どのような親であるべきか、それぞれ異なる生活環境もあり、一概にこれが正しいという答えはありませんが、いずれは巣立つわが子のために、するべきしつけや教育はきちんとしておかなければならないと思います。

 五月半ば、歯科衛生士専門学校の研修会の講師として、御殿場にある国立中央青年の家に足を運びました。一泊二日の研修、講演だけでなく、食事をともにし、レクリエーションにも参加する機会を得ました。どの生徒も笑顔であいさつするなど、姿勢や態度に何ら問題はなかったのですが、どこか物足りなさを感じました。話を聴いたり、ゲームに集う様子はどの生徒も同じで、個性やインパクトのある生徒が不思議なくらい見当たりません。集団からはみ出す者もなく、皆平均的で素直な生徒が多いように思いました。

 二年間の学校生活。授業数も多く生徒同士、ましてや一年生と二年生の交流がほとんどないこの学校は毎年、この合同研修を企画し、専門知識や技術だけではなく、人とのつながりや人間関係の大切さを少しでも学んでもらおうと実施しているそうです。ここ数年、人との接し方に戸惑い、何事にも消極的な生徒が多く、入学後の二カ月は、生きる姿勢、心構えを教えていると引率の先生は話します。友達感覚で子供と接するあまり、注意ひとつできない親も増えているが、入学後、生活指導の中で問題があれば注意を促すと、反発するよりも素直に受け止め、自らの行動を正す生徒も少なくないとの弁に驚かされました。

 時代にあった親子関係と言えばそれまでですが、社会のルール、物事の判断をしっかり身につけさせるためには、決して友達としてではなく、親として厳格に教え導いていく大切さを、あらためて引率する先生の語りから考えさせられました。親の手を借りなければならないのは、基本的生活を身につける時であり、身体の成長にしたがって心も成長し、子供から大人へ近づいていくのも自然の摂理です。子供をしつけ、教育するためには、親もまた襟を正さなければなりません。子供は、親の姿を見て育つのです。健やかに育ってほしい、立派な人になってほしい―。わが子の成長を願うのはどの親も一緒のはず。決してその成長を親自身が妨げることのないよう努めたいものです。

 子供が大人へとはばたく姿を見守っていくのも親の役割。親が意識開拓し視野を広げていくことも、明日の日本を担う子供たちを育てる重要な鍵となるのではないでしょうか。


(上毛新聞 2002年6月6日掲載)