視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
福祉住環境コーディネーター 松本賢一 さん(新町 )

【略歴】高崎高校、早稲田大学卒。セイコーエプソンに勤務していた間、エプソンドイツ(デュッセルドルフ)に出向。89年、家業を継ぐためマツモト家具店に入社。00年度新町商工会青年部長。新町商店連盟理事。
福祉用具


◎自立度の向上へ活用を

 介護保険制度や福祉住宅改修工事、福祉用具の利用について、自分の思い込みにより誤った解釈をし、利用の機会を失っている方にまだまだ出会います。

 例えば、介護保険にかかわるサービスを利用できるのは、六十五歳以上の被保険者および老化に伴う特定疾病にかかった四十歳から六十五歳未満の被保険者のうち、要介護認定を受け、介護が必要と認められた方であります。それにもかかわらず、七十歳以上が適用の対象と思い込んでいて、現在六十九歳になったから、あと一年我慢すれば利用できる、と認定の申請をしていない方がいました。

 行政の発行する広報紙など信頼できる情報源から正確な情報を得て、ご自身とご家族のために、ぜひ、自立したより豊かな日常生活を営んでいただきたいと思います。

 住宅改修工事についてもさまざまな改修方法がありますし、福祉用具もさまざまに工夫された使いやすいものがあります。いくつか紹介してみます。

 浴室やトイレの壁がタイル張りのため手すりが取り付けられないと思っているケース。タイルの壁そのものが老巧化して崩れる恐れがある場合を除いては、アンカーを使用するなどして、適切な位置にしっかりと手すりを取り付けることができます。

 洗い場から浴槽に入るときのまたぎ越しのために手すりを付けることがありますが、ご家族の理解が得られず、また、借家で壁に取り付けることができない場合には、浴槽のふちに、大きめのネジにより着脱のできる浴槽手すりもあります。

 浴槽内で体が浮き上がり危険な場合には、浴槽内の壁面に接着剤で手すりを取り付けることができます。この方式ならば、浴槽に穴を開けることがないので、水漏れの心配はありません。不用となり取り外すときは、へらで取り外すことができます。

 せっかく手すりや段差スロープ等を取り付けたにもかかわらず、日常過ごす居間の畳から立ち上がるのが困難で、トイレまでいざって移動するケースもあります。座った状態から立ち上がることが困難なのです。そのためには、電動昇降座椅子(いす)があります。座椅子に座った状態から立ち上がる時は、ボタンひとつで座面がゆっくりと上がり、立ち上がることができます。立ち上がることさえできれば、水平移動は手すり等を使うことにより安全にできるという方にとっては、大変便利で自立度が向上します。

 家を出入りする際、通常は玄関を通りますが、居間から玄関までが廊下伝いで距離がある場合などは、居間の縁側から出入りした方が便利なケースがあります。そこに踏み台を置くことはできても手すりを取り付けられる壁がないことがあります。その場合は、使う場所や使う方の状況に合わせた寸法で製作することができる手すり付きの踏み台がおすすめです。これにより、家の出入りが楽になり、外出や庭いじりを安全に楽しむことができて日常生活に大いにプラスになります。


(上毛新聞 2002年6月26日掲載)