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高瀬クリニック院長 高瀬 真一 さん(高崎市南大類町 )

【略歴】勢多・東村出身。桐生高校、群馬大学医学部卒。74年、同学部集中治療部助手。85年、国立療養所足利病院医長。89年、済生会前橋病院循環器内科部長。95年、群馬循環器病院副院長。98年から現職。
動脈硬化


◎食事と運動で予防を

 動脈硬化が関係して起こる病気は脳梗塞(こうそく)、虚血性心臓病(狭心症、心筋梗塞)、閉塞(へいそく)性動脈硬化症などが代表的疾患ですが、全身どの血管にも起こる可能性があります。動脈硬化が原因である脳血管疾患や心疾患は癌(がん)を抜いて日本人の死因のトップになります。そのためか、健康食品がヒットしたり、テレビでも血液をサラサラにするには、ということが話題になるのは、皆さん自分は大丈夫かという心配があるからではないでしょうか。

 動脈硬化は生まれた時から始まる、といわれています。朝鮮戦争で、若いアメリカ軍兵士に動脈硬化が認められていました。その後、動脈硬化が原因で起こる狭心症や心筋梗塞の疫学調査が世界中で行われました。その結果、アメリカ人の虚血性心臓病の発生頻度は日本人の十倍で、ハワイ在住の日系人はその中間でした。北欧のフィンランドやロシアも虚血性心筋梗塞の多い国でした。

 注目されたのはイヌイットでした。彼らは、高血圧がなく、出血傾向があって虚血性心筋梗塞の発症がない、という結果でした。食生活は生魚を多く摂取し、塩分はほとんど摂取していませんでした。出血傾向は、魚脂に含まれるエイコサペンタエン酸が血液中にたくさん含まれているためでした。いわゆる血液がサラサラ状態だったわけです。逆に、アメリカ人に虚血性心臓病が多いのは、脂肪の取りすぎなど食事習慣との関係が強く、ハワイの日系人もアメリカ的生活習慣により、動脈硬化の進展が早くなってしまいます。

 動脈硬化の進展を早める要因は、コレステロール、糖尿病、高血圧などがあり、危険因子といわれています。コレステロールが二五〇を超えると虚血性心臓病の頻度が増加し、高ければ高いほどその頻度も増えます。糖尿病も動脈硬化と関連があり、虚血性心臓病の頻度は二倍以上になります。高血圧は最高血圧一八〇以上、最低血圧一〇〇以上で、虚血性心臓病の頻度が上昇します。高コレステロール、糖尿病、高血圧がそろうと虚血性心臓病の頻度は十五倍にもなります。その後、アメリカでは脂肪摂取を控えるキャンペーンが行われ、淡泊な日本食が見直されました。逆に日本では、子供のコレステロールがアメリカの子供よりも高い、ともいわれていますので、将来日本人の虚血性心臓病が増加するのではないかと危ぐされます。

 動脈硬化の予防は、食事と運動が基本です。コレステロールや脂肪を控えて標準体重を目指しましょう。運動は肥満を改善するだけでなく、血圧を下げる効果があります。また、脂肪の代謝を改善し、善玉コレステロールを増やすことにより動脈硬化を予防します。

 動脈硬化度は、血圧、コレステロール、糖尿病と関係しますが、最近は脳波伝播(でんぱ)速度の検査より血管の硬さ(動脈硬化の程度)が分かります。また、血液がサラサラかどうかは、細胞マイクロレオロジー検査で測定できます。二つの検査を用いて、虚血性心臓病の発症と動脈硬化の関係を検討しております

(上毛新聞 2002年6月28日掲載)