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形作家 森 竹巳 さん(太田市菅塩町 )

【略歴】東京芸大大学院修了、上毛芸術奨励賞など受賞多数。太田市役所や太田高、館林・彫刻の小径などに作品設置。筑波大芸術学系助教授、モダンアート協会会員、日本デザイン学会会員、基礎造形学会会員。

立体造形



◎条件が厳しい屋外設置

 ここ数年、幾つかのモニュメントを造っている。六月も太田市の中央公園に作品を設置した。そこで、今回はモニュメントとしての立体造形作品の制作について報告したいと思う。そして、モニュメントなど屋外の立体造形作品に関心を持っていただくのと同時に、その背景についての理解もお願いしたいと思う。

 屋外設置の大型作品は自分だけの希望では制作することができないので、これまで機会に恵まれたことに対しては大変ありがたく思っている。ただ、困るのは依頼主が多くのことが未定のままに話を持ち掛けてくることである。先方からすれば、まずは打診、ということなのかもしれないが…。

 そこで条件の確認ということになる。その条件とは、完成期日・予算・設置場所などである。予算や設置場所も決まっていないこともあり、制作するにもどのようなものを造ってよいものやら困惑してしまうこともしばしばである。しかし、こちらの希望を反映させる余地もあるというふうに判断すれば、かえってよいことなのかもしれない。設置する場所は作品を発想するもとになり、作品の形状や大きさにも影響を及ぼすものである。造る側としては、より理想に近いものを造りたくなり、材料費や加工費がかさみ、作家料もほとんどないことが現実である。

 屋外に設置ということで私の場合は、耐久性のあるステンレスを使用することがほとんどである。従って、模型と簡単な図面とを作製し、専門の業者に発注することになる。ほかの作品のようにすべて自分で加工、制作するのなら妥協することなく最後まで思い通りに造ることができるが、発注して制作するということは、ある程度の妥協は覚悟しなくてはならない。作品の狙いと技術的な妥協の範囲を明確にして、業者との共同制作、コラボレーションということになる。

 公的な場所への設置は、安全性に留意しなければならないのはいうまでもない。強風や地震などで壊れたり倒れたりしてはならない。そのためには、作品に応じてどの程度の基礎が必要なのかを慎重に検討しなくてはならない。大きな作品や構造が複雑な場合は、専門家に依頼して正確な図面を描いてもらうこともある。よく他人からは半永久的に残る作品ができていいですね、と言われる。しかし、作品によっては恥をさらすことにもなる。よって、一過性の展覧会用の作品にも増して力が入るのも事実である。そして、モニュメントということで、作品の意味付けも大事な要素となる。特に私のような抽象の作品の場合は、依頼主に制作の意図を説明し、十分理解してもらうことも大切なことなのである。

 パブリック・アートや町づくりの一環として彫刻を設置している地域も少なくないが、単に作家の実績だけではなく、真にその場にフィットした作品であるか十分検討して設置するべきであろう。また中長期の見通しをもってグランドデザインしていくことも大切であろう。

 これを機会に、身近なモニュメントなど屋外の立体造形作品にも目を向けてみてはいかが

(上毛新聞 2002年8月6日掲載)