視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
NPO法人・環境ネット21理事長 
六本木 信幸 さん
(伊勢崎市中央町 )

【略歴】桐生高、明治大商学部卒。76年、ダイエーに入社、10年間勤務する。群馬合金専務を経て、89年からグンゴー社長。環境ネット21はNPO法人として、県内第1号の認証を受ける。

あいさつ



◎充実した一日へ励行を

 子供たちとあいさつを交わして気づくことは、最も元気良く、統率のとれた、あいさつをしてくれるのは、幼稚園児であるということです。先生の熱心な指導と、親の関心の高さが、その要因だと考えます。

 もちろん、小学生もハキハキと気持ちの良いあいさつをしてくれますが、中学へ行くと少し雰囲気が変わってきます。それは、あいさつの良くできる生徒と、そうでない生徒との差が出始めてきます。

 高校では「よせやい、照れるぜ!」とばかり、私の大きな「こんにちは」のあいさつに逃げていく生徒も出てきます。大学のキャンパスで、あいさつをすると、浮いている自分に気がつきますが、就職ガイダンスの講師で登場すると、さっきまでの無愛想がうそのように、“スマイル〇円”で迎えてくれるのは、少し奇異に感じる場面であります。明らかに、教育が、高等化すればするほど、あいさつが悪くなるのは事実のようです。

 これは、先生があいさつよりも重要なことを教え、そして、親が、あいさつよりも重要な何かを期待しているからであります。だから、日本中の企業は、新入社員教育で、社会人として、一番重要なことは、あいさつであることを教え、場合によっては、社外講師を招き、高額な講師料を支払い、あいさつのトレーニングをします。「あいさつがしっかりできて、時間を守ることができれば、立派なビジネスマンだ」と豪語する社長さんもいらっしゃいます。

 もう一度、親子であいさつの重要性を話し合ってみてはいかがですか。もちろんそのためには、夫婦のあいさつが、誰よりも、“さわやか”であることが、必要十分条件であります。朝起きて、「おはようございます」と言うから、生きている実感があり、今日一日、元気に生きていくエネルギーがわいてきます。トントンとネギをきざむまな板の音に、みそ汁の香り、食卓に飾られたお母さんの情熱と、魚や肉の命をいただく自然の恵みに感謝して「いただきます」と言えば、食材を残すわけがありません。「ごちそうさまでした」と朝日に映えるお母さんにお礼を言うから、お母さんが、輝いて見える。「行ってまいります」「行ってらっしゃい」の出発には、気がみなぎり、交通事故などに遭うはずがありません。学校では、多くの友達と支え合って生きていることが分かるから、「ありがと」「ありがとう」の大合唱になるのです。「ごめんなさい」と自分の非を認める素直さの表現には、意外と勇気がいることを知るのです。職員室に、入る時、背筋を伸ばし、「失礼します」と言ってみたりすると、少し大人になったような気がするし、礼儀・マナーを実感していくようになるのです。

 こんなにも充実した一日、一日をしっかりと生きているからこそ、就寝前に、家族の人たちと交わす「お休みなさい」のあいさつの後に、良い夢を見ることができるのです。素晴らしいあいさつを交わして素晴らしい夢を見ようではありませんか。夢を語り、夢を追い、夢を実現することは、人類だけに与えられた、特権であり、特技なのです。

(上毛新聞 2002年8月11日掲載)