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全国過疎地域自立促進連盟・調査研究部長 
湯沢 進  さん
(東京都東大和市 )

【略歴】前橋市出身。前橋高、群馬大卒。本県と埼玉県、自治省に勤務。この間、岡山市財政局長、熊谷市助役を歴任。本県林務部長を最後に退職し、5年前から全国各地の過疎問題に取り組む。

若さ



◎年齢でなく心の持ち方

一カ月後に敬老の日がやってくるが、いつの間にか自分が敬老される年齢になってしまった。まだ若いと思っていたが、昨年市役所から介護保険手帳が送られてきてあらためてわが身を認識した。しかしまだまだ元気を出そう。

 今年こんな経験をした。もう二十年も前の現役のとき、埼玉県の熊谷市に助役として勤務したことがある。市には、市長、助役や市議会議員を務め卒業した人たちによる特別職OB会があって、私もそのメンバーとなっている。この特別職OB会は、毎年現役の市長と市議会議長が主催し、地元の国会議員や県会議員を来賓に招いて例会を持っている。

 例会に参加する人たちは、卒業生ばかりであるから全般的に高齢であるが、卒業後も商工会議所や農協の役員であったり、自治会や老人会などで役職についていて、それぞれの方面で何かと活躍している人が多い。なかには赤城山で宝探しを生きがいにしている物好きもいる。

 しかし、いつもの例会での話題といえば、当然に物故した会員の思い出とか年金の話とかが多くなり、全般的に湿っぽくなりがちなのはやむを得ないことかもしれない。

 例会の次第は、まず主催者である市長と市議会議長が市政の近況を報告しながら開会のあいさつをする。続いて来賓の国会議員や県会議員がこれも近況をまじえてあいさつをし、その後に助役経験者のうち一番の先輩が乾杯の音頭をとるのが恒例となっている。今年はこの一番の先輩が体調を崩して欠席のため私に順番が回ってきた。

 乾杯の音頭といっても何がしかのあいさつが必要なのであるが、市長をはじめ多くの人のあいさつで言うべきことは言い尽くされてしまっている。この際、重複する話は避けて、高齢者の集まりだから元気の出ることを言おうと腹を決めた。まずこの集まりを持っていただいたお礼を簡単に述べてから次のように続けた。

 「今日お集まりの皆さんは私を含めて“年配者”といわれますが、最高齢の方でもまだ八十歳代です。皆さんはまだまだお若いですよ。実はいま日本全国には百歳以上の方が一万二千人以上もいるのです。われわれはみんな百歳までにはたっぷり時間があります。さあ今日の参加者は全員百歳以上生きて、その仲間入りをしましょう。しかも健康に生きて、みんな市政のOBでもあるので、ボランティアで市政の発展に協力し、貢献していきましょう。それでは、みんなが百歳以上生き、いつまでもボランティアで市政に貢献していくことを誓い合って、乾杯!」

 案外にこの気合が受け、みんなが元気に乾杯したのである。ある地区の敬老会長さんは「いい話を聞いた。今度の敬老会ではこの話をさせていただこう」などと言ってお酌をしてくれるのであった。

 若さは年齢で計るのではなく、心の持ち方によるものといわれている。ある外国の詩人が「年を重ねただけでは人は老いない。理想を失ったとき、初めて老いる」とうたったという話を聞いたことがある。

(上毛新聞 2002年8月14日掲載)