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建設会社勤務(管理建築士) 川野辺 一江さん(館林市近藤町)

【略歴】東洋大工学部卒。都内の建築設計事務所勤務などを経て結婚後、一級建築士に合格。管理建築士を務めている。館林市の中心市街地再生を考える「まちづくりを考える研究グループ」メンバー。

小さな旅



◎ネット仲間と長野へ

 先月、私は長野県の富士見町と原村に出かけ、一泊二日の夏休みを過ごしてきた。インターネットのホームページで知り合った富士見町在住の方のお宅を会場にさせてもらって、ネット愛好者の交流会であるミニオフ会を開くことが一カ月以上前から計画されていた。

 当日、集まった参加者は神戸からKさんと奥さん、Kさんの七十七歳のお母さん、それに大、高、中学生の子供さんと妹さんの家族。奈良のMさんと七十歳のお母さん、小学生の息子さん。館林から私と富士見町のCさんが加わり総勢十四人の大人数が集まった。

 今回のホスト役のHさんも七十歳の女性。東京で旦那(だんな)さんと薬局を開いていたが、お店は息子さんに任せて富士見町に老後を過ごす住いを建てて住んでいる。雪下ろしや住宅の増築、修理はネット仲間のCさんに頼んでいる。昨年の神戸オフ会にCさんがHさん夫妻の車を運転して出向いた。Hさん夫妻とCさんはネットの仲間の四国の友達の所にも車で出かけた。この夏、Hさん宅には四国の友達の一家や埼玉のKさん、兵庫のAさんが訪れて宿泊したとのこと。足と腰が弱くなって車いすを借りてきたKさんのお母さんはお孫さんやKさんの奥さん、妹さんに体を支えてもらってHさんのお庭を見たり、屋敷の裏にある松林でCさんが前日から古畳を用意して的を作ってくれたアーチェリーを射るのを楽しそうにMさんのお母さんと眺めていた。時々、お孫さんたちがそばに来ておばあさんと一緒に笑っている。私は足腰の弱った高齢者や身障者がいる家族は一緒に遠出の旅行をするのは最初から無理だと思っていた。Kさんは自分の家族と一緒に妹さんの家族も旅行に誘ってお母さんを連れてオフ会に参加した。神戸から信州までの長距離も八人で支えれば無理でない。

 その夜は隣の原村のペンションに十三人が泊まった。Kさんが二十数年前に訪れたその宿はペンションの草分けの時代から今日までずっと営業していると聞いて、私はそのペンションの長続きする秘けつを知りたいと思った。江戸っ子のCさんが富士見町に住み始めて十年以上になるそうだが、原村は夏は避暑地として、冬もスキー場として東京から中央高速道と中央線を利用してお客さんが来るので経済的に豊かな村だと話してくれた。ペンションの夕食の時、Kさんが妹さんと今回のオフ会に参加するのに一泊にするか二泊にするかでけんかしたと話してくれた。Kさんの飾らない人柄が頼もしく思えた。食後はオーナー夫婦がピアノとギターを弾きながらフォークソングを聴かせてくれた。ペンションの魅力はこの辺にあるらしい。若い人たちの歌った歌もうまい。

 次の朝、安曇野に行く神戸の一行と別れた。私はCさんの案内でMさんたちと入笠山に登り、高山植物を見てから列車に乗った。隣席の学生から気遣いの言葉をかけられた。この旅で私の若い世代に対する偏見が修正された。

(上毛新聞 2002年9月8日掲載)