視点 オピニオン21
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コトバ表現研究所主宰 渡辺 知明さん(東京都品川区東五反田)

【略歴】桐生高、法政大卒。「桐生青年劇場」で公演活動に取り組んだ後上京、調理師専門学校講師を務めながら「表現よみ」を研究。日本コトバの会講師、事務局長。ホームページhttp://www.ne.jp/asahi/kotoba/tomo/

サクイン作り



◎内容の理解が深まる

 世の中は情報化時代、読書の分野でも多読や速読がはやっています。ビジネスの世界ではたくさんの情報をすばやく入手することが課題でしょう。しかし自分の好きな本をゆっくり味わいながら読むことにも大きな意義があります。今回は本の全体を自分のものにするためのサクイン作りをご紹介しましょう。

 サクインとは、専門書などの後ろに付録としてつけられている五十音順に並んだ項目、人名、用語などの表です。そこにつけられたページ数をたどると本文に戻れるようになっています。サクインには、その本のキーワードがまとめてあるので、その用語をたどりながら、国語辞典を引くように本の中心点を読むことができるのです。

 しかし、残念なことは、一般の本にはサクインはついていません。また、ついていてもなかなか役に立ちません。というのは、それは著者が作ったもので、読み手の引きたい語句があがっているとは限らないからです。ですから、自分の好きな本のサクインは自分で作ればよいのです。むずかしいことではありません。本を読みながら、これは大切だとか、このあたりはあとで読み直したいと思ったら、そこのキーワードをサクインに取り出して、ページ数をつけ加えればいいのです。

 サクイン用のページには、本の後ろの空白ページの裏と表を使います。タテ四つ折りにして、ランの上にみだしを「ア、カ、サ、タ、ナハ、マヤ、ラ、ワ」と書きます。語句の頭のオンで分類して、それぞれのランに語句とページ数を書き入れていくのです。たとえば「言葉」なら「カ」のランに入ります。

 サクインを作りながら読むと、本の内容の理解が深まります。文中からのキーワードを拾いだすことで、内容の中心点がとらえられるからです。また、キーワードは繰り返し出てきますから、本の中で内容がどのようにつながっているかも分かります。

 ところで、サクインは専門の本ばかりでなく、小説を読むときにも使えます。小説の付録としてついている「人物一覧表」をサクインの形で作ればいいのです。どんなに多くの人物が登場してきても、名前で混乱せずに読むことができます。人物が最初に登場したとき、名前をサクインに入れてページ数を書き入れます。あとは人物が登場するごとにページ数を追加していくのです。いつでも、最初の登場場面のページにもどれますし、その人物の行動の軌跡をたどることもできます。

 現代は多くの情報に囲まれた時代ですが、じっくり読んでみたい本は、そうたくさんあるわけではありません。そんな一冊を見つけたら、ぜひサクインを作って読んでみてください。面倒な作業のように思うかもしれませんが、本を読むときにちょっと努力すればできることです。そうして読むうちに、知らず知らずのうちに本がまるごと自分のものになってしまいます。あなたもぜひサクインを作りながら本を読んでみてください。

(上毛新聞 2002年9月20日掲載)