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福祉住環境コーディネーター 松本 賢一さん(新町)

【略歴】高崎高校、早稲田大学卒。セイコーエプソンに勤務していた間、エプソンドイツ(デュッセルドルフ)に出向。89年、家業を継ぐためマツモト家具店に入社。00年度新町商工会青年部長。新町商店連盟理事。

福祉住宅改修


◎自立した生活に重要

 去る九月二日、福祉住環境コーディネーター二級合格者フォローアップ実践研修が東京の御茶ノ水で開催され、参加してきました。約六時間講師の話を聞き続ける受け身の研修でした。そのため、福祉住環境コーディネーターとして現場で直面している問題についての活発な質疑や討議を期待して参加した私にとっては、残念な内容でした。

 しかし、多くの福祉住宅改修工事を実践してこられたという当日の講師の先生によると、二級合格者を対象とした研修において、先生の出された住宅改修事例の演習問題に満足に答えられる人が、東京都内で10%、その他の地域での研修では1%もいないということでした。そのレベルであれば、質疑や討議が成り立たないのは、致し方ないかと納得してしまいました。

 果たしてこの状況で良いのでしょうか。介護保険制度の理念からしても、住み慣れたわが家で少しでも長く日常生活を過ごせるよう、在宅サービスの充実を図らなければならないはずです。せっかくのその制度も、各地域にサービスを提供する良き事業者が育っていなければ、画餅(がべい)に帰してしまいます。やはり、住宅内で安全を確保し、介護する人、される人がより負担少なく、より自立した日常生活を過ごせるようにする福祉住宅改修はこれからのわが国社会にとって重要であると思います。

 では、一体誰がこの任務を果たしていくのでしょうか。

 福祉住宅改修工事単独で事業として成り立たせることは、大変困難なことです。手すりの取り付け等を依頼されて、現場へ行って話をうかがってみた結果、既存の家具のレイアウトを変更するだけで問題が解決されてしまうこともあり、収益に結びつかないことも多いです。したがって、関連する事業とともに事業化していくしかないのではないでしょうか。

 では、どのような事業が関連事業として成り立つ可能性があるでしょうか。さまざまある中で、最適なのは従来から家庭生活で必要な道具を供給してきた家具店ではないでしょうか。要介護者は、居間用・玄関用・浴室用・調理用・洗面用とさまざまな生活場面で、最適ないすを選択しなければなりません。家具屋の専門分野です。また、ベッドも扱いなれています。家具のレイアウト提案する際に、生活動線や当該家屋の構造上また家族構成上の諸条件の中で最適な配置を考えること、安全に配慮することなどの訓練も十分されているからです。また、地域密着型の家具店の場合には、なんといっても、地元のお客さまを良く知っており、さらに、信頼関係が築かれているからです。住宅改修を検討する時には、家族以外には知られたくないことも業者に伝えなければ、最良の住宅改修とならない場合もあります。昔から良く知っているからこそ、安心して任せられるという信頼関係も大切なのではないでしょうか。

 これからの社会のため、介護関連のサービスが充実し各地域における介護力が高まる必要性があることを感じております。

(上毛新聞 2002年10月8日掲載)