視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
日本ユニバースシステム開発部総括部長 松下 保男さん(前橋市岩神町)

【略歴】前橋高、明治大卒。日本ユニバース・システム開発部総括部長、1994年から新幹線通勤。前橋中心商店街の活性化を考える会会員、波宜亭倶楽部理事。

取って代わる


◎自然の摂理に従いたい

 一日の勤務は、電子メールを読むことから始まる。広告メールのような情報は斜め読み、仕事の関係は最優先に読み、返事を出さなくてはならない。通信手段がはがきや手紙から電話やファクスへとかわり、さらに電子メールへかわりつつある。新聞も電子媒体となり紙に取って代わるかもしれない。実際、国内国外の電子機器や印刷会社が液晶や有機ELを使い、紙にかわる媒体を研究開発している。インターネットが発展するに伴い、電話、ラジオ、テレビ、出版物など今までのメディアの形態がインターネットの環境に組み込まれて行く様は最近特に強く感じる。

 インターネットが、必ずしもすべて、在来のメディアに取って代わるわけではないが、これまでとは異なった形で、相互に刺激を与え、われわれの生活を新しい力で刺激して、膨大な数の新商品や新サービスをつくり出す。これが同時に、インターネットの可能性を持った企業や国々の経済を拡大させるのだろう。いわゆるIT化である。

 生活が多様化しているため通信手段だけでなく、身近なところでは金くぎ流の文字もワープロできれいに清書したり、文章の添削までしてくれるようなありがたい道具もある。さまざまな業種や状況で従来の様式に取って代わる物やシステムが出てきているわけである。

 群馬県は山林が多く県境では雪もたくさん降るからおいしい飲み水には事欠かない。昔はどこを掘っても大体安心な水が出た。私は通勤で東京に出るが、ここ十年余り、よほどでない限り都内の生水は飲まない。おいしくないし、不安なのである。そこでペットボトルや缶入りのお茶を購入するのである。水や空気は生命が生きるためには不可欠で、生まれたときから存在していることは当たり前でこれからも不安であるに違いない。

 しかし待てよ。郵便は運送業者が、安全は警備会社が、銀行は消費者金融業やクレジット会社が取って代わり二十四時間対応する。ごみの処理を民間業者が行う。水はペットボトルに、空気はボンベに取って代わるのだろうか? パソコンのウェブサイトの検索でもたくさんの代行の情報が得られる。かわった代行業では墓参り、懸賞申し込み、旅行の代行(切符や宿の予約の代行ではない)、自分のかわいいペットの散歩、出産の代理まである。ついていけないのだ。いままでの常識や、あまり考えずに行動していたことが急激に変化して、違ったシステムが取って代わりつつある。

 大辞林によると、《【取って代わる】ある人や物に代わってその位置・地位につく。入れ代わる。》ということである。

 世間がだんだん忙しくなってきて、時間が足りないから誰かに代行してもらう。自分のできないことや難しいことをお願いすることは仕方のないことだろう。ペットの散歩を頼むことぐらいはかわいいが、深刻なのは出産の代理を頼むなんてことは…。自然の摂理に逆らうことは良いこととは思えない。

(上毛新聞 2002年10月9日掲載)