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詩人・作詩家 古舘 多加志さん(富岡市下黒岩)

【略歴】本名は俊(たかし)。東京で生まれ、甘楽町で育った。富岡高、明治大学卒。元東京新聞記者。在学中から童謡や歌謡曲の作詩に取り組む。02年4月から県作詩作曲家協会名誉会長。日本童謡協会会員。他の筆名にだて・しゅん。

富岡で生まれた童謡


◎誰でも口ずさめる旋律

 紅葉彩る秋季は、まさに芸術の秋だ。各地で地域ぐるみの多彩なイベントが展開されている。以前、本紙面をお借りして「童謡の里づくり」で少し触れさせてもらったが、今回は「富岡で生まれた童謡」について紹介させていただく。

 富岡市では、来年六月に開催予定の「第十六回かぶらの里童謡祭」に向けて、県民を対象に十月末日を期限として童謡歌詞を募っている。よかったらあなたも応募してみませんか。

 さて、この童謡祭は二十六歳で早世の同市出身の童謡詩人、橋本暮村(一九〇七―三二年)を顕彰する目的などから、昭和六十三年にスタート。童謡詩曲の募集は、暮村作詞の未発表作品である『月は知ってる』から始められた。以来、隔年で詩と曲のコンクールを実施してきたもので、これまでに六曲の誕生を見た。

 いずれも、独創性と誰でも口ずさめる旋律などを基準に選ばれた佳作といえる。最優秀に決まった大賞作品(市長・暮村賞)は『月は知ってる』(曲・内藤昭恵)『こねこのメリーゴーランド』(詩・稲場真澄、曲・奥山巨樹)『青い空が折り紙だったら』(詩・大澤美代子、曲・小渕賢一)『夏の畑で』(詩・吉澤孝夫、曲・飯井均)『黄色の歌』(詩・高木睦枝、曲・山田香)『みょうぎさん』(詩・角由加里、曲・鈴木理勢)。

 この中で、本県関係者は内藤(吉岡町)、稲場(尾島町)、奥山、山田(太田市)、小渕、高木(前橋市)、吉澤(伊勢崎市)、飯井(富岡市)の八氏。角さんは応募当時、富岡市西小に在籍(現住所は東京都墨田区)していた。一方、県外は大澤さん(横浜市)と鈴木さん(静岡県浜北市)の二人。

 『みょうぎさん』は、本紙面で音楽教育家たちが既に取り上げたことがある。この作品は第十三回童謡祭時の大賞受賞歌詞で、角さんは当時、なんと七歳だった。昨秋、富岡市で開催の「第十六回国民文化祭・ぐんま2001 童謡の祭典」で初演の記念曲でもある。作曲者が同じ年齢の女児とあって反響を呼んだ。記憶に新しい。

 ところで童謡祭を催す市や実行委から委嘱を受け、祭りの運営面など側面からお手伝いしている一人として、手前みそかもしれないが、いつも感心させられることがある。それは、これらの作品を童謡祭行事に盛り込んで、毎回のように発表している点だ。機会あるごとに反復して幼児や童謡を歌うグループが歌唱しているのは、作詞・作曲者らにとって最高の喜びであるに相違ない。

 「せっかく生まれた作品を大切に…」と、CD化やメロディーボックス設置などに努める自治体や市民らの姿勢に対し、逆行するさもしい行為がある。このボックスが壊される騒ぎを見聞している。“いたずら”として片付けられない犯罪行為である。器物破損の悪あがきを許せない。

(上毛新聞 2002年10月26日掲載)