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都市計画研究所勤務 横手 典子さん(東京都渋谷区代々木)

【略歴】前橋女高、明治大学工学部建築学科卒、同大学大学院工学研究科修士課程修了。千年広場の会会員。

合意形成


◎「平等に二等分」は古い

 先日、米国の合意形成方策を勉強している知人から、こんなナゾナゾを出題された。

 「机の上に一つのオレンジがありました。二人の姉妹が、このオレンジを取り合ってけんかしています。そこに母親がやってきました。さて、あなたが母親ならどうしますか」

 あなたなら何と答えるだろうか。私は迷わず「オレンジを二つに切って分ける」と答えたのだが、あっさり「ハズレ。それは旧来型」と言われてしまった。知人が言うには「ジャンケンで勝った方がもらう」「姉が妹に譲る」というのも旧来型なのだそうだ。

 「じゃあ、どういうのが新しいやり方なのよ」とかみ付くと、まずは二人の話を聞けと言う。何でもその聞き方にミソがあるらしく、知人は「欲しい動機」を探るような聞き方をしろと言う。

 例えば「なぜオレンジが欲しいの?」。すると二人の子供は口をそろえて「食べたいから」。これではまだらちが明かない。さらに会話を続ける。「どうやって食べたいの?」「何か料理に使うの?」

 こうした動機の核心に迫るような質問を重ねていくと、徐々に二人の真意が見えてくる。よくよく聞けば、一人の子供は「ジュースにしたい」、もう一人の子供は「皮を煮詰めてジャムをつくるの」。

 さあもうお分かりだと思う、どうやって分ければ良いか。そう、この場合、一人には「実」を、もう一人には「皮」をあげればいいのである。

 私はすっかり感心してしまった。つまりこれは、新時代の合意形成のやり方なのだ。「とにかく平等に二等分」は古いのである。変に妥協せずに、欲しいものを手に入れられるように考えるのが、これからの時代のやり方なのだ。そしてこの時大切なのは、まず各人が「何を欲して意見しているのか」をちゃんと聞くこと。口先から出た意見の「裏にある本心」を聞き出し、本当に欲しいもののレベルで解決の糸口を探っていくことが重要なのである。

 この逸話、ときに社会のさまざまな状況に置き換えてみることができる。例えば道路建設の是非をめぐって、住民と行政が対峙(たいじ)してしまうという場面がある。住民は口々に「反対」と叫び、行政は何とか「推進」しようと説得にかかる。反対と推進、真っ向からの対立である。

 この状態、先のオレンジの話にあてはめれば、まさに双方が「欲しい」と言い合っている状態なのである。これではらちが明かない。互いにぶつかり合うだけだ。
 ここでちょっと目線を変えて「なぜ」に着目したらどうなるか。住民は「なぜ」そんなに反対しているのか。行政は「なぜ」推進したいのか。もしかしたら住民は、一本のケヤキの大木を守りたい一心で反対を唱えているのかもしれない。行政は、既存道路の渋滞緩和を促すバイパスをつくりたいだけかもしれない。つまり少々短絡的に言えば、大木をよける別ルート、という策で合意できるかもしれないのである。

 お互いに「本当に欲しいもの」を明らかにし合えば、きっと策は見えてくる。オレンジの話はそんなことを教えてくれているのだと思う。

(上毛新聞 2002年11月22日掲載)