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柴山建設代表 柴本 天二さん(草津町草津)

【略歴】長野県延徳村(現中野市)出身。長延徳中卒。群馬建築士会理事、吾妻流域林業活性化センター木材利用促進検討部会長、県木造住宅産業協会理事などを歴任。草津温泉の旅館などを多数建設。

地球資源の活用


◎求めたい新時代の発想

 自然を変えた、経済効率優先のダム造りは、周囲の沢の水を取水してトンネルで集め、ダムの下流も鉄管路・トンネルで水を流すことで自然の生態系を破壊して、死んだ河川を出現させている。水や空気をタダと、あまりにも水に甘え過ぎた結果、今大切なものを見失ってはいないだろうか。

 私なら、川の持つ生命力を最大限生かすため魚の遡上(そじょう)が自由にでき、川辺の生き物も生息のできる水の利用を提言したい。

 具体的には、ダムはせいぜい堤にして低落差発電所にした河川に負担のかけない物を多用して、トンネルは極力避けて河川はいつも清流を確保する。夢みたいな話だが、下流河川には遊水地を、上流には水を蓄える森林を確保する。

 昔は吾妻川の岩島付近にも船着き場もあり、舟の往来もあったと聞く。清流も失った、今までの森林政策・農業政策・宅地政策・河川行政が間違っていたのではないかと悩む。

 今の農業は、濁流を生む畑の開墾を生み出すような政策。宅地住宅政策も十七歳の犯罪を生み出すような、利潤のみの考え。将来性には程遠い建築方法、効率優先・能率第一と土地についても過剰な負担をしいてきた社会構造が悪かったのだろうか。

 いずれにしても、日本の国は多種多様な森林資源を持つ長い列島で気候風土も、高温多湿と気候も目まぐるしく変わる国。戦後の建築も供給優先でこれらのことを軽んじ、考慮してこなかった。

 法隆寺(ヒノキ)や中尊寺(ヒバ)は千年の時を経てその姿を保つ。有名な木造の伝統的工法であるが、今の近代建築家にはあまりにも評価が低い。

 これからは、日本各地の気候風土に合わせた木造建築の普及と各地域に育った木材(地域で生産する)の利用の促進が重要になる。併せて森林資源の適正な活用も重要である。

 ダムや鉱山開発・温泉のみで死の川となったわけでないが、緊急に吾妻川の再生を考えた今の方法、石灰の投入だけの方法では限りがある。地球の資源は永遠でない。自然がリサイクルしてくれる自然な方法を模索して新しい方法に切り換えるべきである。もう時代も、原子・電子・バイオの時代…。一歩進めて百年、二百年、千年の夢を追ってほしい。

 最初に石灰を投入による中和を考えられた先生と谷底まで共に歩いて研究を手伝った者の言うことでないが、その時代は、その時代のこととして資源のあるうちに、新しい発想を求めたい。

(上毛新聞 2002年12月29日掲載)