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松島税務会計事務所所長 松島 宏明さん(桐生市相生町)

【略歴】明治大卒。1985年に桐生へ戻り、10年前に会計事務所所長に就任。桐生JC理事長、県小中学校PTA連合会長、生涯学習桐生市民の会会長などを歴任。現在は桐生市教育委員を務める。

公平


◎税制に制度的疲労

 最近では国の財源問題などで、消費税の税率の引き上げの問題などが大きく取り上げられるようになってきました。確かに近年、不況の感覚が強く、法人企業の黒字割合も予想以上に低いと思われ、慢性的に税収の減少を招いていることは実感されています。しかもこの印象は、バブル以降変わらぬベクトルとして感じられるようになっていて、今では多くの人々に、税率や非課税枠の調整といった微調整でクリアできる範囲を超えているのではないかと思わせるようになってきました。そのため、事業税の外形標準課税の問題や、東京都のホテル税やディーゼル車に対する課税など、新たな仕組みの模索が始まっています。

 一方わが国の税制を見ると、大きく分けて直接税と間接税から成り立っています。もうすぐ申告時期(確定申告)をむかえる所得税や法人税、相続税などは直接税。これに対して消費税に代表される間接税の中にはその他、酒税や自動車税、印紙税などが入ります。税制はこれまでその二つの税制の組み合わせによって成り立ってきました。その根底には「公平」という概念があります。直接税に関しては、多くの所得を得た者が、多くの税金を負担するという考え方の上に累進課税の税率が適用され、一方間接税はそれとは別に、ものやサービスに対して一定といった公平の考え方が生かされています。

 時代の変化に対して、その比重が変化するのは、ある意味公平の考え方が、時代背景の中で変化するということでしょうか。そういえば、小学校の運動会などでも、同じくらいの走力の児童同士を競走させるようになったりするのは、そういった考え方の変化に沿ったものなのでしょうか。よく外国の例など聞いてみますと、誰もが同じスタートラインに立つことのできる環境を公平といい、結果は問わないといいます。もちろんさまざまな考え方があっていいと思いますが、その違いに対して十分な議論は必要ではないかと思います。そう考えてくると、公平ということは私たちが常に心に留め置くべきことではないでしょうか。

 話を税制に戻しますと、今までのところでは論じられていない使う側の公平も、さらにこれから話題とされるべきです。また国税に偏った比重も、地方財政の財源論とともに論じられなくてはなりません。こう考えてくると、税制は多くのところで制度的疲労が表れているようです。

 今、合併議論が吹き荒れる地方都市においても地方財源や、地方交付金に対する公平性や、その使途に対する公平性がもっと論じられるべきであろうし、その根底をなす学校教育の中でも、一体何が公平かということが、場面ごとに検討される必要があるはずです。

 やがてそれは、真に地方の自治の意識となって根付くことで初めてこの国のスタートなのかもしれません。

(上毛新聞 2003年2月2日掲載)