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東洋大学国際地域学部教授・学部長 長濱 元さん(東京都西東京市住吉町)

【略歴】北海道旭川市出身、北海道大卒。文部省、経企庁、信州大などで行政、調査研究、教育に携わる。1997年より東洋大教授。専攻は社会学と政策研究。研究課題は科学教育システムの国際比較。

サステイナビリティー



◎維持可能へ地域を再生

 「サステイナビリティー」という言葉を聞いたり、見たりすることが多くなっています。日本語に直せば「持続可能性」、あるいは「維持可能性」という意味になります。この言葉は、環境問題を認識し、取り組み、解決していくための「キーワード」として使われるようになった言葉です。そのため、この言葉は深い意味と幅広い適応性を持っています。

 地球環境問題は、端的に言えば、産業革命後の大量生産、大量消費、大量廃棄の文明が生み出したものといえましょう。人類は過去二百年もの間、この文明の中にドップリ漬って生きてきました。そして、「経済成長」というもう一つの「キーワード」の虜(とりこ)になってきました。「環境問題が大事」と心の中では思っていても、日常生活の中では「少しでも豊かな生活」「少しでも便利な生活」を求めることに意識も身体もとらわれて生きています。

 このような「豊かさへの衝動」を脱却して、「量」よりも「質」を重視する「維持可能な生活」を実現することが二十一世紀の人類に要請されています。読者の皆さんも新聞・テレビ等の報道で感じていると思いますが、世界的に国家単位の経済活動を見ると、一部は既に「破綻(たん)」しているか、「破綻」に向かって突き進んでいるという状況です。この状況から脱出するための一つの方策が「地域の活性化」のための「地方分権化」の流れです。

 もちろん、「地域の活性化」は黙っていて自然に実現するものではありません。その地域の人たちの熱意とアイデア、多大な努力によって初めて可能となるものです。世界の各地には経済的に困難な環境の中で、「活性化」に成功している「地域」が数多くあります。それを可能にしている条件は幾つかありますが、ある程度共通して言えることは、「豊かな自然資源」や「大企業」は必ずしも必要ではなく、それよりは「住民の知的レベル」が高いこと、「元気な中小企業(農家)」がたくさんあることなどです。ヨーロッパ、北米、日本にはそのような条件をみたした地域は相当数あります。両毛地域もその中のひとつではないでしょうか。ただし、現在の両毛地域が「活性化」しているかというと、まだ「はい、そうです」と元気に答えられる状況ではないように思えます。

 「活性化」のための「キーワード」のひとつは「学習力」です。ここでいう「学習」は子どもや若者を対象とする「学習」ではなく、「大人が学ぶ活動」です。大人が機会をとらえて積極的に学習するだけではなく、「大人同士」が「知識」や「経験」を伝え合って「共に学び・成長する(共学)」活動を含む「学習(共育)」です。そのような活動がもたらす知的レベルの向上が環境改善や生産活動と結びつくとき、その地域は「活性化」するのです。そのような知的活動に大学も参加し、優れた学習の場を提供したいと願っています。

(上毛新聞 2003年3月23日掲載)