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群馬陸上競技協会副会長 平方 亨さん(渋川市南町)

【略歴】渋川高、早大教育学部卒。現役時代は400メートル障害を中心に国体などで活躍。長野原高、桐生高教員などを歴任。日本陸上競技連盟国際委員長。今月から同連盟に出向。

群馬の陸上競技



◎競技力向上の差は情熱

 よく県内スポーツ関係者の中で「陸上王国群馬」なんて言葉を使ってもらっています。ありがたいことだと痛感していますし、それに見合うように頑張らなくてはいけないとも思います。このような評価は主に国体での成績で判断されるようです。陸上競技の国体は、他の競技とは異なり、関東ブロックの予選がなく、全国共通で三十三人の選手で戦うことになっています。全国共通の出場条件ということで、開催県の優勝というのは国体の歴史上十県も満たなく、すごく少ないのです。群馬県は昭和五十八年のあかぎ国体において史上最高得点で優勝することができましたが、このことが「陸上王国」といわれるゆえんであると想像します。

 このことに加えて、歴史に残る名選手の存在も大きいのではないでしょうか。女子走り高跳びの八木たまみ選手(太田市立商業高校卒)や男子百メートルの不破弘樹選手(農大二高卒)は一般の人にもよく知られた存在です。二人ともオリンピック代表に選ばれていますが、オリンピック選手を多く輩出していることも本県の陸上競技の特徴ではないかと思います。そういえば、東京オリンピックの開会式の旗手も本県出身で渋川市在住の金子宗平さんです。

 話は変わりますが、本県の競技力の向上は、核になる学校と名物指導者の存在が大きいのではないでしょうか。昭和五十年すぎあたりから、全国で勝負してきた農大二高、富岡東、中之条、富岡、群女、伊勢崎商業等々の活躍に支えられてきたのです。そして、その指導者や卒業生たちによって群馬県の陸上競技の伝統が受け継がれて現在に至っています。

 全国的大会を数多く実施している点も群馬の陸上の特徴です。日本陸連サーキットの「群馬リレーカーニバル」、お正月の日本のスポーツの風物詩である「全日本実業団駅伝」や、一九九九年に前橋市のグリーンドーム前橋で実施した第七回世界室内陸上競技世界選手権前橋大会など、全国的にも類を見ない大規模の大会を実施しています。

 ところで、私は競技力向上という目的で大事なのは、陸上競技の大好きな人間を増やすことにあると思います。先にスター選手や学校の活躍について述べましたが、陸上競技が好きで部活に入っても、練習ではタイムを計っていたり、大会では補助員などをしている者も多くいます。そうして学校を卒業すると陸上競技から遠ざかっていってしまいます。興味があって部活動に入ったのですから、スポーツの楽しさの神髄を味わえるような活動をさせてあげられれば、競技人口が増えて基盤が確立し、その土台から競技力の向上が進むのではないかと考えます。

 その基盤に立って大事なのは、数多くの選手たちに強くなる方法を科学的に教えることではないでしょうか。そのことができると、自然とトップになる選手が輩出されると思います。そのために何が必要なのかはすごく重要でしょうし、いろいろな考えがあると思います。もし一番大事という言葉を使うならそのような事実に基づいた情熱が必要でしょう。最後になって、ちょっと難しい話になってしまいました。

(上毛新聞 2003年4月2日掲載)