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富岡市保育部会長・郷土史研究家 大塚 政義さん(富岡市中沢)

【略歴】法政大学卒。県教育史編さん委員、文化財調査委員などを歴任。水戸天狗党と下仁田戦争、国定忠治、天野八郎などの歴史研究、執筆に取り組み、1984年度上毛出版文化賞を受賞した。

保育園



◎家庭や地域に密着して

 今、保育園では、「地域に開かれた園づくり」を目指してそれぞれ取り組んでいる。

 児童福祉法の改正により、これまでの「措置」という体系をなくして、利用者の希望によって保育園を選べるという「選択」制度に変わってきた。

 これは、主体性が利用者の側に移ってきたということである。あの保育園は「イヤ」だと思えば利用者は入園しなくてもよい。そのためにも、利用者は各保育園の情報開示を求めることもできる。

 昨今、家庭の養育機能の低下は、著しいものがある。こうなると育児については誰が真剣に考えるのか。保育園は保育園として真剣に考えなければならない。それぞれの保育園によって、具体的な保育の方法が違うのは当然である。地域性も違うし、子どもを取り巻く生活環境だって違う。しかし、そういう中で、保育園がやらなければいけない問題、時代が求めている問題は確実に把握し、実践していくことが大切である。

 なぜ、保育園があるのか。第一に子どものためだし、地域社会や家族の要請に応えるためである。要するに育児を支援するためである。つまり社会福祉のために存在するのである。これからの保育園の世界にも市場原理が導入されてくるわけで、保育所間の競争も激しくなってくる。しかし、園児の獲得や経営のための設備投資で競争するよりも、まず、保育所本来の役割というか、保育園がしなければならないこと、そういう面で競争していかなくてはならない。

 これからの保育園は「保育に欠ける」子どもたちの施設から「保育を必要とする」子どもたちの施設に変わっていかなくてはならない。

 今、保育園の保育士がやっているしつけのかなりの部分は、昔は家庭でやっていたことである。家庭との連携は、家庭と保育園が子育てについて一緒に考えていくことだと思う。働く女性にとって、たしかに社会生活は大事である。働く女性なくしては社会の充実はあり得ないと思う。しかし、子育てもまた親の大事な仕事なのである。

 保育園の専門性、保育園の機能など基本的な問題をもう一度直視して、これからの保育の在り方を確認することが必要である。

 今後保育園の専門性や機能をどう高めていくかあるいは深めていくか、これが保育園の大事な課題になってくると思う。

 言い換えれば、保育所本来の姿に立ち戻って、家庭や地域に密着した保育園にしていきたいと思う。それが「地域に開かれた園づくり」だと思う。

 これが、私たち保育園の基本だと思う。

(上毛新聞 2003年4月23日掲載)