視点 オピニオン21
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トレーニング指導士 大谷 博子さん(桐生市宮本町)

【略歴】日本女子体育短大卒。3年間、中学校で体育教諭を務めた後、家庭に入り子育てしながら文化活動を始める。1977年児童文学の部門で県文学賞、81年には日本児童文芸賞新人賞を受賞。

親子体操



◎わが子の成長知る機会

 「さあ、隣の人とぶつからないよう、広がってください!」

 いつもと一味違う、「親子体操の指導」は、私の好きな仕事の一つです。

 幼稚園の家庭教育学級や、地域の保育サークルの集会、小学校の学年行事で、オリジナルな親子体操を、たくさんさせていただいてきました。

 わが子の、一挙一動を見守ってきた赤ちゃん時代に比べ、友達遊びが増えるころから、親はいつの間にか、子どもの身体機能の発育発達ぶりを大ざっぱにしか把握できなくなるようです。

 スキンシップを伴う「親子体操」は、そんなわが子の成長の様子を知る、絶好の機会ではないでしょうか。

 体育館に集まった、たくさんの親子が、「どんなことをするのかな?」と、期待に満ちた表情に出合うたび、

 「よーし、ここに参加している親子全員が、ああ、楽しかったと、感じてもらえますように」と、私の心も、パワー全開となります。

 依頼グループのニーズに合わせ、幼児や低学年の親子体操は、巧緻(ち)性や敏捷(しょう)性を重視した運動動作を中心に、また、高学年親子には、補強運動的なものを中心に、プログラムを組み立て出向きます。

 準備運動の段階で、額に汗をにじませ、「フウーッ」と、肩で息をするのは、大抵大人、子どもたちは、ケロリとしています。

 本運動の親子体操は、いつでも、どこでも誰とでもできる、易しい動作ばかりなのですが、結構、親子のかけ引きもあったりで、勝ったの負けたのと、次第に熱くなります。

 次々紹介していく動きに合わせ、子どもたちは、存分にチャレンジし、親はわが子の力量を受け止めながら、共に跳んだり、逃げたり、捕まえたり、大きな背中にしがみつかせたり、素早く脚の間をくぐり抜けさせたり…。

 体育館の中は、弾んだ息づかいや笑い声、そして何より、親子の生き生きした、いい顔でいっぱいになります。

 まれに、親の不用意な一言を小耳に挟み、とても残念に思うこともあります。

 「こんなんができないんかい! ○○ちゃんなんか、あんなに跳べてるがね!」

 がんばっているのにけなされた子どもの心はいかばかりでしょうか? さっきまで、得意満面だった笑顔が、一瞬にして消えてしまいます。

 「親子体操」は、親子の共同作業の中で、わが子に、「出来た!」「また出来た!」という運動による小さな達成感を何度でも、味わわせてやれるところに、良さがあります。

 小さな達成感の積み重ねは、必ず自信につながることでしょう。

 十数年間続けてきた、親子体操の仕事、大切に育てていこうと思っています。

(上毛新聞 2003年4月30日掲載)