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NPO法人さくらメイツ専務理事 赤石 光政さん(境町東)

【略歴】前橋商高卒。個人経営だった家業の葬儀店を会社組織に替え、1994年から代表取締役社長。2000年にさくらメイツ設立。

お客さまの立場で



◎努力と発想力が必要

 さくらメイツは消費者と加盟店(お店)とで構成している会です。自店も含め、お客さまへのサービスとは本当に奥の深いものだと、最近つくづく考えさせられたことがあります。

 それは、あるチェーン店本社が、各店舗責任者に対する教育の一つに「お客さまの立場で考えなさい」と言う指導があります。それは誰でもが知っている言葉であり、そのように努めているつもりでしたが、その指導内容の深さを知った時、私が思っていたこととは別の次元での教育だと、痛感させられました。

 その指導とは明日の天候を調べ仮設を立てて品ぞろえし、立証しなさいというものです。例えば、明日は天候が崩れ、雨または空っ風が吹き荒れるような日には主婦も出不精になり、近くで買い物をして夕食にはあまり手をかけず、簡単にすませようと考えるのではないかと仮設を立て、品ぞろえをします。

 例えば食材必需品の卵、小分けの野菜、総菜類等を多めにそろえ、お客さまを待ちます。そして、その仮設が正しかったかを検証し、立証する。このように日々の天候、温度、湿度、季節等、さまざまな状況から情報を得て仮設を立て、それを考えて繰り返すことにより、お客さまの立場で考えられるエキスパートに成長していくということです。その結果、例えば近くに工事現場が出来れば、そこで働く人々に合った食材をそろえるという心遣いができ、来店してくれたお客さまにも満足していただけることができるようになるのです。

 単に売り上げ増進のためといえばその通りですが、毎日、お客さまのニーズにこたえようと考え、行動するということは、ものすごい努力と発想力が必要です。また、お客さまの立場に立って少しでも良いものを提供する、お客さまを心から喜ばせる、そして即対応の心構えが必須であります。店主として、お客さまがほしい品物と出合った時の笑顔ほどうれしいものはありません。きっと、この教育の根本にもお客さまの笑顔が見えているのでしょう。

 町の商店と同じような規模のチェーン店が大型店の乱立する中、繁栄を続けるにはそれなりの理由があり、不断の努力に支えられているのだと、つくづく実感させられました。さくらメイツ加盟の小さな店には小さいなりの、小さいからできることがたくさんあるのです。戦う相手は大型店ではなく、自分自身なのです。目先の利益、もうけに走らず、何よりも心を込めた商品を心を込めて送り出す。さくらメイツは、経営姿勢の原点「心」を忘れない会へと発展することに努力をしていきます。

(上毛新聞 2003年5月27日掲載)