視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
桐生ふろしきの会会員 大槻 圓次さん(桐生市東)

【略歴】神戸高商卒。5年間の商社勤務の後、帰郷して家業の買い継ぎ商に携わって以来、5年前に佐啓産業を退社するまで、一貫して織物関連の現場で働いてきた。わたらせプロバスクラブ会員。

出前教室



◎結びの文化を伝えたい

 桐生ふろしきの会が出前教室をはじめてから数年になる。お呼びがかかれば、どこへでも、参加者何人でも出かけていく。いつでもというわけにはいかないが、都合のつく会員が対応してやってきた。

 出前の内容は、風呂敷の結び方、包み方がほんの数分間で覚えられることを体験してもらい、それがやや自分のものになるまでお手伝いするというものである。

 さらに数十種類の包み方ができるのだが、ニーズによって、体験学習の時間も包みの種類も変えている。

 この数年間のささやかな出前教室の中間報告をまとめてみた。

▼中・高年の方々について
 風呂敷はたいてい家にあるが、ほとんど使われていない。知識もあり、手に覚えもあるのに活用していないのはもったいない。新しい包み方も、知っているものの応用なのでお教えすればすぐできた。あとはぜひ日常に使っていただくことだ。いつでも何度でも使えて、限られた資源を上手に使えるのだから、買い物やスーパーに風呂敷を使ってさえいただければ、ごみは激減するし、ダイオキシンは出さなくてもすむ。

 お誕生祝いやパーティーの贈りもののワインやお酒をしゃれた風呂敷でワイン包みにすれば、ラッピングペーパーを何度も包みかえて破かなくてすむことも分かっていただけた。日本文化伝統のラッピングクロスがあったんだと。

▼リハビリ中の方々について
 指先を使うことはとても有効だ。脳も刺激され活性化するようだ。自宅でひとりで包む練習もよいが、デイケア施設へ出かけて、皆さんに包む手助けをしているが、包みが完成した時の拍手に見せる笑顔は最高である。風呂敷リュックをお互いに見せ合いながら、お花見に行こうよと騒ぐ顔はとても楽しそうで、心のケアともなろう。これはNHKや群馬テレビのニュースにもとり上げられた。

▼若年層といわれる人たち
 今のところ最もアプローチ不足の層である。高校生の一部には冊子を配布したが、結びの文化継承や情操教育の点でも、もっと研究せねばならぬ。入学式や卒業式、成人式などでも使ってもらいたいが、今後の課題である。

▼園児・小学生について
 こどもたちは風呂敷を決して古いものとは感じてはいないので、興味もあり、覚えも早い。市民文化会館と遊ぼうなどの行事でふろしき教室をやるが、積極的で理解も早い。先日、幼稚園児と母親たちの会で教室を開いたが、ベレー帽やリュックは大好評で笑い声が絶えなかった。若いお母さん方はさすがのみ込みも早く熱心で、短時間にたくさんのコースを消化できたが、ぜひもっと日常生活にとり入れてもらいたい。本来の実用性を分かってほしい。

 われわれがうれしかったのは、毎日のお弁当箱を園児がハンカチや小風呂敷に自分たちで包んで持ってきていることだった。四、五歳から結びの文化が継承されていて、今の日本、まだまだ捨てたものでもないといささかほっとした。

 そして、美と用のお手本の風呂敷の復活再生へのおもいを一層深めている。

(上毛新聞 2003年5月29日掲載)