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(株)新進技術顧問 遠藤 悦雄さん(前橋市昭和町)

【略歴】富山市生まれ、東京教育大卒。1956年、新進食料工業に入社し、94年から技術顧問。一昨年、技術功労部門で農林水産大臣賞を受賞。現在、発明協会群馬支部前橋分会の副会長も務めている。

食品の変遷



◎現在は水・酸素時代に

 私が、食品に関与してから五十年近く、時代とともに学問が進歩しましたが、人間の食べる食品の基本は何も変わっていません。大きく変わったのは医学で、悪いところの処理には薬か手術に頼っていたのが、食品治療へと変わり、各成分の代謝機構が鮮明になってきたことでしょう。

 最近では、みのもんたの『おもいきりテレビ』、堺正章の『発掘、あるある大事典』等で大々的に食生活と健康を取り上げ、放送後、その食品がブームになることが多いといわれています。

 人生で最も大切なのは健康だと思いますので、終戦後、どのように食品が変遷してきたかを整理してみました。

 私たち人間の体の組成も、毎日摂取している食品の組成も全く同じ分類で、(1)水分(2)タンパク質(3)炭水化物(4)脂肪(5)ビタミン(6)ミネラル(7)繊維―となっています。

 戦後の食品変遷は、こうした組成の機能探究だったといっても過言ではありません。

 日本は戦争に負けてから、これまでの栄養学的にバランスのとれた日本食が洋食へと変わり、良い面と悪い面が入り乱れ、結果的には体位も大きく変わり、寿命が世界一になった事実を、食品の変遷から追ってみたいと思います。

 終戦後、日本人の体格が欧米人に比べキャシャなのは、動物性脂肪ではないかと学校給食にマーガリン、バターが採用され、コッペパンにはマーガリンがたっぷりでした。同時に、脂肪の多い肉類が出回りました。ハンバーガーが流行したのもこのころです。その結果、肥満児が続発したため、脂肪ではなく良質のタンパク質ではないか、と植物性蛋白(たんぱく)時代が到来しました。

 人間の体格を作るのは、脂肪ではなく良質の蛋白であり、特に植物性のタンパク質(大豆、小麦蛋白)が注目され、人造肉、畑の肉等といろいろな商品が生まれ、国も荷担するようになり、今も販売されています。

 次にミネラル時代に入り、ミネラルの過不足が体に与える影響が探究され出しました。

 まず、食塩(ナトリウム・Na)の取りすぎが高血圧症になるとされ、一日六グラム以下にすることが叫ばれ始めました。私が入社時、漬物の塩分が15%だったものが、現在5%程度までになっています。グルタミン酸ソーダもNaとして敬遠されました。

 日本人のカルシウム(Ca)不足が警告され、高齢者の骨多孔症、精神的「いらいら」、学校暴力の原因にまで発展しました。牛乳を飲むことが進められ、最近ではマグネシウム(Mg)との併用が大切とされています。

 肥満からスリムさを求め、糖控えめ商品、炭水化物の多い米飯を取らない傾向に動き、米余り現象、減反政策が取られたのはこのころです。

 次にがん予防としてビタミンが注目され、ビタミンC、A、B1、E等が取り上げられ、ビタミンAの多い緑黄色野菜が脚光を浴びました。

 また何の成分もない食物繊維が「すべての成人病の根源は、今世紀の食生活が繊維を失ったためである」(バーキット博士)とまで言われ、体内の有機物質、毒性金属の吸着、排せつががんの減少につながるとされています。

 以上のように、人間の体代謝が食品の組成との関係から探究され、変遷してまいりましたが、現在は人間の70%近く占める「水」の代謝、効用が論じられており、一方呼吸して摂取している「酸素」、なかでも「活性酸素」が注目され、まさに「水・酸素時代」となっています。

(上毛新聞 2003年6月15日掲載)